●ジャガーになった男 佐藤賢一著
伊達政宗の命によりイスパニア(スペイン)に渡った使節団の斉藤寅吉という侍が主人公の伝奇小説。
読み終えた直後の感想:なんじゃ、これ?
5秒後:いいのか、これで?
10秒後:いいんだろうなぁ、面白かったし……
学んだこと:ウソは「気前よく」つくもんだ。
●サウスポー・キラー 水原秀策著
よくできた小説なので先に数少ない欠点をあげる。
・ハードボイルドっぽい洒落た会話が随所に挿入されているのだけど、個人的な趣味では、そのうちのいくつかはすべってるように感じた。
・ミステリー部分、野球の試合の描写、興味を引くキャラ、どれも及第点以上なのだけど、バランスがよすぎて「ここが凄い」という驚きが薄かった。
ミステリー小説としてもプロ野球を題材にした小説としても、もちろん娯楽小説としても、当たり前のようにちゃんと面白い。
いやホント、よくできた小説だと思う。
●人格転移の殺人 西澤保彦著
6人の身体に6人の人格が次々にスライドするように入れ替わっていく中で起きる殺人事件。
なるほどこういうのもアリなのか、ちょっと驚いた。
これがありなら、まあ、いろいろアリだよなとは思う。
●アイルランドの薔薇 石持浅海著
実は、「アイルランドの薔薇」というタイトルを見て期待していたのは、ドンパチとかドカンとかの血肉が飛び散る、それもドロドロした憎悪だらけの、なんかそういうえげつないものだった。
で、読み始めたのだけど、そういう意味では見事に期待はずれだった。
でも、複雑で美しい詰め将棋のごとき過不足のない密室ミステリーで、その類の上手に組み上げられた小説を読み終えたときの気持ちよさは十分に堪能できた。
ただし、よくできたミステリーにありがちな、登場キャラの機械的な役割分担というか駒化は多少感じたかな。
まあ、外道なものを期待してたから、まっとうさが薄味に思えただけかもしれないけど。