●企画の手順
世界を救うわけでも魔王を倒すわけでもないので、勇者の対極にあるような主人公をまず決めることにした。
できるだけ敷居を下げるために、このご時世なら周りに一人やふたりはいる「学校は卒業してみたものの就職の当てがない」「コネも財産も特技もない」「彼女もいない」。ただし、共感を得やすいように正直で誠実な男だ。
彼の目的は、恋人と結婚するために大金を得ること。
ありきたりの男だから名前も平凡。とりあえず仮名は「ジョン」、恋人は「マリー」。
……あとで気の利いた名前を考えよう、と思っていたのだが、結局そのまま(笑)。
僕は、固有名詞を考えるの、苦手なんだよ。
次に主人公ジョンくんを取り巻く周囲のキャラクターを考えた。
実は今回、二ヵ月半後に別の仕事が始まることがほぼ確定していたので、執筆にかけられる時間が限定されていた。
そこで、時間をかけずにキャラを作成する手法を用いた。
ジョンを構成する要素(男、若い、コネなし、金なし、特技なし、兄弟が多い、真面目、体育会系、素朴、心身とも健康など)を書き出し、それらに対立する要素を「男←→女」という風に書き出し、適当に組み合わせた。
ドラマというのは、ようするに価値観の対立を大小とりまぜ波風立てて適当な頻度で押したり引いたりすれば、それなりに盛り上がる。
逆に言えば、主人公の周囲のキャラや状況に主人公と対立する要素を持たせておけば、自然と衝突と緩和が起きる。
悩んだのはヒロインのマリーをジョンより富裕にするか貧乏にするかだった。
目的が大金を稼ぐことであるから、このポイントは重要だ。
両パターンのヒロインを想定してみたのだが、どっちも悪くない。
ということで、結局現在の強烈な裏ヒロインがいる構図となった。
このとき参考にしたのが、「ヤッターマン」をはじめとする「タイムボカン」シリーズの一連の悪役、ドロンジョ様、マージョ様だった。(続く)