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蜂窩織炎(ほうかしきえん)
桝田 省治

 向こう脛がいい感じに腫れあがってきたので病院に行った。
 蜂窩織炎(ほうかしきえん)というものだった。
 足の付け根のしこりが原因かと思ったが逆で、実は向こう脛の患部が原因でしこりができたそうな。
 右足の膝から下を湿布してゲートルのごとく包帯でグルグル巻き。
 そして人生初の点滴。
 文庫本をもちこんでおいてよかったと思ったが……伝染病の話だった。

 湿布薬は、黄色。
「これ、衣服に付着すると絶対に取れないから注意」と言われたが、包帯を巻いている途中から包帯がみるみる黄色に染まる。
 右足だけズボンをまくったまま徒歩5分の自宅まで歩いた。
 雨が降っていて人通りがなかったことが嬉しい。
 明日も湿布、明日も点滴。

 伝染はしないそうだが、この格好で電車に乗るのはとても嫌だ。
 明日の打ち合わせをどうするか……。

 ちなみに蜂窩織炎としては重症だそうな。
「熱が出たでしょ?」と訊かれたが熱は出ていない。
「どうしてこんなになるまで?」と訊かれたので、向こう脛がはれ始めたのは昨日だと応える。
「ああ、もともと身体が健康なんですね」と医者は笑った。
 健康じゃないから来たんだよと思う。

 こういう腫れもののとき、いつも思う。
「いいから切開して膿をかきだして直接抗生物質でもなんでも振りかけろ。泣いたりしないから」って。