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点滴のお供その2 伊坂幸太郎
桝田 省治

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●ラッシュライフ 伊坂幸太郎著

「面白いから読め読め」と言われると「そのうちね」と言いつつ結局読まないことが多いのだが、100円コーナーにあったので試しに買った……のがたぶん1年ほど前。
 点滴のお供に読み始めた。
 いわゆる群像劇、今どきの言い方だとパッチワークという手法らしい。
 1節ごとに5人ほどの視点がくるくる変わる。
 その5人ほどのお話が交わりそうで交わらず、もどかしい。
 さらに、その5人およびその周囲の人物が癖者ぞろいで、話があれよあれよと言う間にあらぬ方向に展開する。
 その興味だけで十分に読める。
 どう収拾をつけるのか、本の半分ほどを読み終えて気になり始め、よせばいいのに解を分析してしまった……。
 で、話の構造自体は、予想の範囲を越えなかったものの、確かに僕に奨めてくれた多くの人の弁どおり面白かった。
 次々に登場する人物がほぼ全員、探せばもしかしたら世の中にはいるかもしれないギリギリ感で、ヘンでかつ実在感がある。
 会話の端々に出てくる引用がマニアックというほどではないが、これもまたギリギリでニヤニヤできる。
「バラバラ死体が歩く」謎とか、マンガみたいな謎が平気で出てくる。このわかりやすい引きも笑える。
 ようするに、とてもセンスがいい。
 楽しい40分(点滴1回の所要時間)だった。

 100円の「グラスホッパー」もキープしてあるので、伊坂幸太郎さん、続けてもう1冊読んでみよう。