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ブラッディ・マリちゃん
桝田 省治

 今日はマリちゃんのことばかり考えていた。
 マリちゃんというのは、中2の女の子だ。小柄でふっくらした体型。色が白くて頭は鳥の巣のような癖毛。メガネをかけている。怒りん坊だ。
 マリちゃんは、興奮すると、ピョンピョン跳ねまわり、小型犬のような甲高い声で意味不明な言葉を喚きちらす。転校生や迷い猫、用務員のおじいさん等に突然理由もなく襲いかかる。見た目に似合わず凶暴な子だ。

 ところで、マリちゃんは地球人ではない。銀河警察の特務員だ。
 実は、マリちゃんが通う中学の地下には、地球の存亡に影響するほど重要な「何か」が隠されているらしい。
 マリちゃんの使命は、転校生や迷い猫、用務員のおじいさん等の身体に潜りこみ、次々に学校に潜入してくる悪い宇宙人から、その「何か」(マリちゃんは中身を知らない)を守ることだ。
 ただし、悪い宇宙人は、完ぺきに地球の生き物に化けているので、マリちゃんには見分けがつかない。なので、とりあえず、怪しいヤツは全部やっつける。なにしろ、その「何か」を奪われては、地球が滅びてしまうかもしれないから。
 でも戦ってみてあまりに手応えがないときは、「もしかしてこの人、ただの地球人だったかも?」と、ちょっとだけ心が痛む。
 だが、ときには冷酷にならねば、銀河警察の使命は果たせないのだ、と自分に言い聞かせる。

 マリちゃんは、身体の硬度や粘度を変えることができる。その能力を使い、主に3種類の技を使って悪い宇宙人と戦う。
 ひとつは、マリちゃんの名前のとおり「はずむ」能力。
 硬い床でもタイミングを合わせてうまく共振させるとトランポリンのように高く跳ねることができる。この技で悪い宇宙人を押しつぶす。
 もうひとつは、身体の粘度を変化させて、壁や天井に張りつく能力。
 身を隠して接近し、敵に不意打ちをかける、敵の攻撃をかわすとき等に使用する。
 三つ目は、身体を硬化し敵の攻撃を無効化する能力。
 ただし、これら三つの能力は身体の状態が異なるので同時に使えない。それがマリちゃんの身体的な弱点だ。
 精神的弱点は、間違って地球人をつぶしたとき一瞬あわてること。

 ここまで書いておいてなんだが、これはアクションゲームの企画
 ……としては平凡。ま、逆にいえば、バランスさえ間違えなければゲームとしてはそれなりの面白さは確定している。
 当然、ウリはそこではない。
 小柄で小太りのマリちゃんが、美少女の同級生や小動物、お年寄りをニコニコ微笑みながら、コミカルな動作で容赦なく押しつぶし、自身もひしゃげたり潰れたりする様。
「キモかわいい」の上をいく「グロかわいい」をめざしたい。
「R-15」指定で、同級生も校長先生も犬もおじいさんもグシャグシャ。マリちゃんも血まみれ。校舎にこだまする笑い声だけが場違いに明るく、決めポーズもキュート。
 タイトルは「ブラッディ・マリちゃん」。