●ザ・ジャグルⅠ Ⅱ Ⅲ 榊一郎著
Ⅰは、独創的な設定の説明に終始していて、その独創的な設定ゆえの面白さまでは、絵は示されているが熱量や臭いまでは感じなかった。
Ⅱは、Ⅰの続きとして過不足なく書くべきことが書いてあった。
が、型や需要を意識し過ぎたのか、バランスがよすぎるというか、走ろうとしたら右手と右足が同時に出た的なチグハグさを若干感じた。
Ⅲは、複雑な設定の中で、わかりやすい敵が登場し構造が見通しやすくなった分、いろんな立場の人物の思惑や行動を追いやすい。
キャラが動きはじめると、もともと骨太な話で役者も揃っているので、文句なく面白い。
これで折り返し地点くらいなんだろうか。
助走が長すぎる気もしないでもないが、続きが楽しみだ。
●パレード 吉田修一著
都内某所の2LDKのマンションで、互いのことをたいして知らない男女4人が暮らしているという、ありえない状況を、リアルなディテールを事細かに積み重ねることで「あるかも?」と思わせてしまう不思議な筆致。
で、「あるかも?」の境界線を越えたころには、ありえない異常がにじむように少しずつ混入されていて、それに気づいたときにはもう手遅れ。
フワフワのクレープに包まれていたのは、甘い甘い腐った果実。
そんな味わいの話。