●春季限定いちごタルト事件 米澤穂信著
身も蓋もない言い方をすれば、お話は高校一年生の男女が主に学園内のちょっとした事件や謎を解決する、ありがちなミステリーだ。
斬新な部分は、探偵役の男女キャラのひねり具合(いや、ひね具合か)だろう。
一見つかみどころがない青くさい二人なのだが、内実は意外に黒い。
そのギャップに本人たちが戸惑う。そこが見どころだ。
とくに小佐内さんの小動物っぽい仕草に萌える。
なるほど、人気があるのもうなずける。
●顔のない敵 石持浅海著
対人地雷とその除去にかかわる人々の周囲に起きる事件を扱った、短編ミステリー集だ。
対人地雷は、戦時中の目的遂行という意味で合理的、反面で戦後に起きる悲惨な事故や後始末の困難さの点で実に理不尽な兵器だ。
本作の登場人物たちの周囲で起きる事件も、合理的かつ理不尽という二つの性質を持っている。
そして、対人地雷同様に、悪魔ではなく人間の手で事件は起きる。それを解決し裁くのも神様ではなく人間だ。
深刻なテーマだ。
その答を探るかのように短編ごとに、見せ方が違って飽きさせない。
ミステリーの仕掛けも気が利いていて確かに面白い。
だが、テーマが深刻すぎて、娯楽としてワクワク楽しんでは申し訳ないような負い目を感じた。