3.
2章
再び現在。死んだはずの少女キリコが純也の前で、あの頃の純ちゃんは可愛かったね、とクスクス笑っている。
「そういえば、なんで俺の前に現れたんだ? いつかつぶさないように避けて転んだから?」
「違うわよ、それは私の獲物。前から目をつけてたんだから、取られてたまるかって」
「じゃあ、俺を食うつもりで近づいたのかよ?」
「最初に、お嫁さんにしてって、ちゃんと断ったはずよ」てなチグハグな会話があって、
今年のターゲットは、地上げを生業にする新興の暴力団と、純也が発表する。
4.
3章。
蟷螂(かまきり)オンナ、キリコと出会った翌年の夏。
純也は別の高校に進学した幼馴染Hが大学生と思しき男とラブホに入るのを目撃する。
同じ日、再び死んだはずのキリコに生き写しの幼女に出会う。
思わず「キリコ?」と声をかけると、幼女は振り向きキョトンとしている。が、しばらくすると
「もしかして、あなたが純ちゃん?」と訊ねる。
幼女は、去年死んだ蟷螂オンナの姉妹の卵から今年産まれたらしい。
また、去年の蟷螂オンナの記憶も持っている。
幼女は「強い感情は、人間の言葉より明解に、匂いや味で同種族に伝わっていく」と説明する。
そして、「今は私がキリコ」と名乗る。腕には純也のイニシャルJを刻んだ傷跡も残っている。
キリコは、再び純也にプロポーズする。
純也は、むやみに人を殺してはいけないなど、人の世界で生きていくためのルールを守ることを条件に承諾する。
キリコは、このルールに納得がいかない風だが、純也が嫌なことはしないと約束する。
「そんなに俺のこと好きなの?」
「うん。食べちゃいたいくらい」
「俺を食うの?」
「いつか純ちゃんが強いオスになったら。そのときお嫁さんにしてもらう」
しばらく楽しい日々が続く。(夜な夜な野良猫狩りなど)
キリコは、純也との約束を忘れたかのように凶暴な一面を時おり見せる。
だが、純也は、攻撃的な性格のときのキリコにも惹かれていく。
またしても惨たらしい殺人事件が起きる。殺されたのは、純也が思わず「人間の屑」と評したホームレスたちだ。
純也はキリコを疑うが、キリコは自分ではないと否定する。
そこにキリコと瓜二つの別の幼女が姿を見せる。
それは、キリコと同じ卵から産まれた姉妹で、ときどきキリコのふりをして純也と遊んでいた。
時おり凶暴な様を見せていたのは、この姉妹だったと判明する。
純也は、姉妹の凶行を止めようとするが、姉妹は、「人間の道徳を押しつけるな」と虫の論理で反論。
さらには、キリコの名前も、純也も自分のものだと主張。なぜなら、自分のほうが強いからだと言う。
言われてみれば、人間を食ったせいか、健康そうで肉付きもいい。
キリコとその姉妹は、数日後に迫った最後の脱皮が終わった直後、殺し合いをして、純也は、生き残ったほうのものとなることが即座に決まる。
純也は、自分がどちらかを選べば殺し合いが避けられると思うが、選ぶことができない。
また自分を賭けて戦うふたりのキリコの殺し合いを想像すると今まで感じたことがない興奮を覚える。
その後も、行きづりの殺人事件が続発する。犯人は相変わらず不明。
決闘の日、純也が約束の場所に到着したことを合図に、少女の姿に変わったふたりのキリコの戦いが始まる。
闇の中、音がほとんどない戦いだ。壁も天井も空間も戦いの場になる。
戦力は互角。壮絶な戦いが延々と続く。両者とも腕がちぎれ、体液を飛びちらし、満身創痍だが、やめる様子はない。
純也も止められない。
突如、片方のキリコが純也に襲いかかる。
反射的に純也を守ろうとしたもうひとりのキリコに隙ができ、首が飛ばされて倒れる。
生き残ったキリコが純也の名を呼びながら、ふらふらと近づいてくる。
純也にはどちらが勝ったのかわからない。
純也は、キリコが怖くなる。
手近にあった鉄パイプをつかむと泣き叫びながら生き残ったキリコを撲殺する。
「純ちゃん、やればできるじゃん」
キリコはそう言って息絶える。
4章は、現在に戻る。作戦会議
5章は、蟷螂オンナのライバル蜘蛛オンナ登場