5.
4章。蟷螂オンナ以外の虫オンナが加わり、暴力団を食い殺す作戦会議が、まるでクラブ活動のようなにぎやかさで和気あいあいと続く。
会話の過激さは、どんどんエスカレートしていくばかり。
だが、その中で冗談を言えるほどに、純也は虫オンナの感覚に馴染んでしまっていることにふと気づく。
いつから自分はこんな風になってしまったのか。
純也は、初めて虫オンナに殺人を指示した去年の夏の出来事を思い出す。
6.
5章。去年の初夏。
純也は、去年同様に、蟷螂(かまきり)オンナの幼女キリコと奇妙な関係を続けている。
純也は、半年前から行方不明になっている幼馴染の女性Hを心配していた。
Hが素行の悪い大学生グループに付きまとわれていたのを知っていたからだ。
ある日、行方不明のHによく似た3人の少女が純也とキリコの前に姿を現す。
少女たちは、一斉に「助けて純ちゃん」と叫ぶ。
キリコは、その少女たちが虫オンナだと見抜き、一触即発状態になるが、なんとか純也が止める。
少女たちが何の虫オンナなのか、種類がわからない。加えて、人間の言葉を喋っているが、なかなか意味が通じない。
キリコが中に入り、最初にわかったことは、行方不明の幼馴染Hは既に死んでいて、目の前の少女たちはその遺体に産みつけられた卵から孵った虫オンナだ」ということ。
虫オンナそれぞれが、死んだ幼馴染Hの記憶を断片的に持っている。
「人間のオス数匹が力づくで交尾した」などの話を総合すると、幼馴染Hは、大学生グループに強姦されたのちに生きたまま山中に埋められている。
「助けて純ちゃん」は、幾度も繰り返されたHの断末魔であったため、虫オンナたちの記憶に刷り込まれたようだ。
純也は、幼馴染Hが自分に好意をもっていたことに今さら気づき、怒りに燃え復讐を決意する。
それもただ殺すだけでは足りない。幼馴染Hが受けた恐怖や苦しみを味あわせてやると誓い、虫オンナたちに協力を求める。
が、虫オンナたちには、純也の気持ちが理解できないらしくうまく伝わらない。それをキリコが独特の言い回しで通訳し、虫オンナたちを納得させる。
問題は、Hを殺した大学生グループは3人だが、虫オンナたちはそのうちの1人しか覚えていないこと。
とりあえず幼馴染Hに似た虫オンナたちを囮にし、不良学生の1人を捕まえることになる。
まんまとおびき出された不良学生は、キリコにより切り刻まれ、残りの2人の名前を白状する。
純也が怒りに我を忘れ、とどめを刺そうとするが、「生きている物しか食べない」とキリコに止められ、始末を虫オンナの1人蛭(ひる)オンナに任せる。
2人目の大学生も、幼馴染Hに似た虫オンナの誘惑に乗る。
欲情し虫オンナとキスをした大学生は悲鳴を上げ、喉をかきむしる。その喉や胸にみるみる穴が開く。それを押さえつけて虫オンナはさらに口づける。
その虫オンナの正体は蜘蛛(くも)オンナ。獲物の肉体を内側から溶かす唾液を注ぎ込んでいる。
3人目の大学生は、共犯2人が行方不明になっているので警戒している。
幼馴染Hに似た虫オンナを拉致して逃走。
数日後、幼馴染H同様に暴行されたのちに殺された虫オンナの遺体が見つかる。
だが、殺された虫オンナの死に顔は薄笑みを浮かべている。
純也は仇を討ちに行こうとするが、キリコに止められる。
殺された虫オンナは地蜂。
3人目の大学生には卵が植えつけられていて、孵化と同時に生きたまま身体中から食い破られると、キリコは笑う。
その様を想像して、純也もゲラゲラ笑い出す。
「そういえば、俺のことまだ食わないのか?」と問う純也にキリコは応える。
「だって純ちゃんが死んだら、来年私のこと覚えていてくれる人、誰もいなくなって寂しいものね。でも純ちゃんは私のもの」
※序章~3章の粗筋も加筆しました。