●夏期限定トロピカルパフェ事件 米澤穂信著
度が過ぎる推理好き、復讐好きの性格を隠し、「小市民」として平穏に暮らすことを目標にしていて、そのために学校では恋人を装っているという、なんともひねた高校生の男女が主人公の推理小説。
1作目は、自転車泥棒を除けば犯罪らしい事件は起きず、日常に潜むささやかな謎を人知れず解いていたのだが、2作目の本作では、誘拐事件が起き、それに誘発され、世間から隠そうと努力していた主人公ふたりの性格の「クロ」さが徐々に出てくる。
ま、そんな感じの趣向。
推理小説の謎解きを設計しそれを小説にしたてる手並みは、とても上手。ただし、それだけなら他にもうまい人はいる。
本作のユニークさは、主人公が非常に優秀な探偵でありながら、その優秀さに本人たちが戸惑い悩んでいるという矛盾だ。
加えて、高校生の男女というのがまたいい。
悩みの中身はかなり変わっているが、他人から見たら取るに足らないことで悩むのが中高生の特権みたいなものだ。
それに同じことで悩んでいても男女でずれる。
中高生の頃の自分の性格や恋愛経験を思い出すと気恥ずかしさを感じる大人が読むとニヤニヤできる設定だ。
●陽気なギャングが地球を回す 伊坂幸太郎著
「陽気なギャングが地球を回す」とその続編「陽気なギャングの日常と襲撃」を読んだ。
読みたい本が手元から切れたとき、買い置きしておいたこの作者の小説は常に一定以上のレベルで面白いから重宝する。
他人のウソが見抜ける、体内時計が異常に正確など、一風変わった特殊能力をもった4人の銀行強盗の話。
各人の能力は、この手の話としては都合がよすぎるものの、性格のいびつさも含めて、徹頭徹尾終始一貫、娯楽なのでバカバカしくて純粋に楽しい。
深遠なテーマなんぞ微塵もないところも素晴らしい。
で、ふと気づいたのが、僕はゲームではおかしな人たちをさんざん登場させていたが、なぜか小説ではほとんど使っていないこと。
ヘンな人は面白いのにね……。
ちょっと反省した。