●だましゑ歌麿 高橋克彦著
歌麿と北斎の代表作をいくつか即座に思い出せて、歌麿や北斎と倹約令を出した松平定信や鬼平犯科帳の長谷川平蔵が同じ時代の人だという程度の知識がある人で、ミステリー読みの方は「絶対アタリ」。
ダイナミックで緻密、史実の解釈も斬新。これは面白かった!
●ボトルネック 米澤穂信著
悩める主人公が「もし自分が〇〇したなら」というifのパラレルワールドに迷い込み、そこで様々な体験をし現実を見つめ直すきっかけを得て、本来の世界へ帰還する。
……というプロットは掃いて捨てるほどあって、そこに乗せるテーマか特異なキャラか、精緻なリアリティか、何らかの工夫がないと差別化は難しい。
本作は、テーマもキャラもリアリティの点でも申し分ない。
でも、個人的にはあまり好きな話じゃないな、好きな人が大勢いるのはよくわかるけど。
きっとウジウジしてばかりで結局何もしない若い男が好きじゃないからだ……若いときの僕がそうだったからねw
●ななつのこ 加納朋子著
ななつのこという童話に感激した女子大生が、その挿話を紹介しつつ、作者に感想を送る。
その手紙に、最近体験した日常の不思議な話をひとつ添える。
作者から返信があり、そこで謎解きがなされる。
基本の構成は、ふたりの往復書簡で7編。
けっこう複雑な構成でかなりのテクニックが必要だが、そういう面倒なことを考えずに自然に読める。
作品内に流れる時間はゆったりしていて、古い酒を飲むようにチビチビ読むのが心地いい。