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家族の話
桝田 省治

 以下、mixiの日記より抜粋。

●プロシュートという物を食す。 2007年10月15日

 昨日、久しぶりに娘と二人だけで出かけた。
 本当は妻と娘が出かける予定であったのが、急に妻の都合がつかなくなり、かつそのイベントに娘が行きたがったので、僕が連れて行くことになったわけだ。

 国際展示場駅前のパナソニックセンター。
 そこで子供向けのイベントが定期的に開催されているらしい。
 今回のお題は、正確ではないが「数学を利用したマジック」てな感じ。

 派手なリアクションができる芸人など会場にいないから、マジックと銘打っているわりには大して盛り上がらなかった。
 が、まあ、なかなか興味深い内容だった。

 妻と娘は何度かパナソニックセンターのイベントに参加している。
 ここに来たときは「昼食はここなのだ」という娘の主張に従い、イタめしのファミレスに入る。
 で、娘はこの店に来たときは「いつもこれにしている」という「プロシュート」なる物を注文。
 とくに食べたい物もなかったので、僕も倣う。

 プロシュートとは、生ハムとパンだった。
 生ハムは妻の好物だ。僕はとくに好きなわけではないが、結婚してから付き合って食べるようになった。
 で、この店のプロシュート。それなりに美味しいとは思う。
 まあ、だが、それは僕にとっては別にどうでもいい。

「へ~~そうなんだ」と思ったのは、娘が僕の知らない間に、僕の知らない食べ物を好きになり、その好みを主張したことだ。
 当たり前ではあるが、娘は僕の複製や分身ではなく別の人間であり、彼女なりの嗜好を持ち、たぶん同じ場所にいても僕と違うものを見ている。
 わかってはいる。わかってはいるが、すこし戸惑った。


●不思議体験 2007年10月16日

 こないだの日曜、娘とふたりで出かけたことは既に書いた。
 実はあの日、不思議な体験をした。
 が、それは体験と言うよりは、僕の思い込みあるいは錯覚だと考えるほうが合理的に説明できる。
 そういう類の話なので、書かないでおいたのだが、日を追うごとに映像が鮮明になる。
 ま、信じてもらおうとは思わない。

 国際展示場駅前の広場、僕と娘は駅に向かってゆっくりと歩いていた。
 子供というものは、広い場所に来ると理由もなく駆け出す。
 娘も鳥のマネでもしているのか、両手を広げてひとりで走り始めた。
 僕の周囲、10メートルくらいをグルグルと回っている。
 そのとき、ほんの一瞬だが娘の姿を見失った。
 といっても、たぶん振り向いて名前を呼べばすぐに見つかる範囲にいることはわかっていた。
 ふと見上げると頭上を鳥が飛んでいるのが見えた。

〈ここからが不思議体験〉
 なぜだか知らないが突然、僕の視界に僕を中心にした半径20メートルくらいの俯瞰図が重なった。
 ちょうど頭上を飛ぶ鳥の目を借りれば、そんな風に見えるだろうというような景色だ。
 僕の右斜め後方5メートルくらいのところに娘がいるのもはっきり見えた。
 娘の姿を確認した瞬間、その不思議な映像は消えた。

 で、右後方を振り向いたら5メートルほど後ろから娘が駆けて来るところだった。
 いや、まあ、ただ、それだけ。


●ヒだっけ? メだっけ? 2007年10月16日

 昨日22時過ぎ、帰宅すると次男がひとりリビングで漢字の書き取りをしていた。
 もうすぐ学校で漢検があり、彼は確か準2級を受けるらしい。
「モンブカガクショウは、文章の文に部分の部、理科の科に学ぶで合ってる?」と問われ「そうだ」と答える。
 続いて「ところでショウなんだけど“少”ないの下は“ヒ”だっけ? “メ”だっけ?」
「目だよ」
「あぁ……」とあからさまな溜息。
 どうやら次男は間違えて覚えていたらしい。

 確かにパソコンの小さな字では「省」の下は「日」と表示される。
 だが、父親の名前くらい正確に覚えてもらいたいもんだ。


●そういえば長男が家にいない 2007年10月24日

 ……と思ったら一昨日から修学旅行に出ているらしい。
 長男は、金はかかるが手間はかからない。
 学校も塾も自分で決めてきて、振込用紙や請求書だけ、そっと目立つところに置いて去る。
 そういうやつだ。
 存在感は、果てしなく薄い。
 うちにいてもたいてい自室で寝ている。
 スイッチを切るように10時間くらい平気で寝る。

 次男がうちにいないとすぐわかる。
 怒鳴り声が聞こえないからだ。
 次男は、人を怒らせることに才能に近いものがある。

 娘がいないと笑い声が消える。
 まさしく明かりが消えたようだという比ゆに合う。

 ところで、長男が通う中学の修学旅行。
 ちょっと趣向が面白い。
 広島、神戸、京都と移動するらしいのだが、学校側が用意するのは宿泊するホテルだけ。
 あとは数人のグループの自由行動。
 もちろん事前にスケジュールを学校に提出しチェックを受けるのだろう。
 だが、うちの長男の修学旅行のテーマは、冗談か本気かは知らないが「関東と関西の漫画喫茶の品揃えの比較」だとか、ほざいていた。
 ま、それも確かに広義では「修学」には違いないし、現地に行ってみて自分で見聞きして初めてわかることは多い、けどな。


●お兄ちゃんの悪影響 2007年10月28日

 近頃、小二の娘が壁を登る。
 幅一メートルほどの廊下の左右の壁に手足をつけて少しずつ登るのだ。
 天井近くから「見て見て」と嬉しそうに声をかけてくるのだが、
見ているこっちは、足を滑らせて墜落しそうでそれどころではない。
「危ないからやめなさい」と叱るがいっこうに聞かない。
「だってヒロちゃん(次男)もやってたもん」というのが、娘の言い分である。

 さてその次男である。
 来年早々中学受験であるにもかかわらず、さっぱり勉強しない。
 あまり口うるさく言いたくはないが、なにしろ彼は受験生であり、現在のところ志望校の合格率は30%。
 つい「勉強しろ!」と怒鳴る。それに対して
「だってナツも(長男)勉強してなかったもん」というのが、次男の言い訳である。

 確かに長男がうちで勉強しているのを僕も見たことがない。
 なのに、それなりの学校にまんまと受かった。
 が、これにはわけがある。長男には妙な美学があるのだ。
 努力しているところを近親者に見せるのは、彼にとって恥ずかしいことらしい。
 たとえば、僕は偶然、塾帰りの長男と同じ電車に乗り合わせたことがある。
 声をかけようかと思ったが、あまりの異様な光景にためらった。
 彼は床に座りこみ座席をテーブル代わりに算数の問題を猛スピードで解いていた。
 それも満員電車の優先席である。迷惑この上ないが本人は気にする様子もない。
 だいたいそばに父親が立っているのに気づきもしなかった。
 また、保健室のベッドを消しゴムのカスだらけにして困るとの苦情も小学校から来た。
 彼は体調不良を理由に授業をズル休みし、保健室のベッドを勉強部屋にしていたらしい。
 その苦情の件を長男に伝えたが、筆記用具をボールペンに替えただけで、保健室の利用はけっきょく卒業まで続いたようだ。

 兄弟でも三者三様である。
 得意不得意も違う。
 なのに真似しなくていいことばかり真似をする。

 ちなみに件の長男のもうひとつの美学は
「ギリギリでパスすること」
 たとえば60点が合格ラインなら、彼にとって100点より60点のほうが何倍も価値がある。
 150人で足切りなら、147~150番あたりがしびれるらしい。
 それを達成するために必要な最低量と最短時間を見積もり、本当にそこを狙ってくる。

 親にとっては、嫌な美学だ。
 
★ハルカ後編(仮)執筆中

 現在の進捗状況は10%くらい。

★新作ゲームを2タイトル発売予定

 12月に僕が制作にかかわっているゲームが2タイトル発売される予定。
 詳細は、そのうち。