このゲームにおける唯一のパラメータである成功要素は、他のゲームにおけるパラメーターでも、特徴でも、技能でも、アイテムでもありません。
もっと抽象的な事象を示す要素、すなわちファクターを指します。
なぜこのような抽象化で示すかというと、TRPGにありがちな特異点問題を解決するためです。
数学的に極端に違うスケールのものを、現行技術では数式ではきちんと記述できないし、ゲームバランスをその上で取ることもできないという、古典的なゲームデザイン上の問題です。
非常に分かりやすい話をすればレベルUPで強くなるタイプのゲームはレベルが上がり過ぎるとゲームバランスが崩壊します。あるいはリアル性というものを、喪失してしまいます。
あるいは良くできたミリタリーTRPGの戦闘処理システムで戦車砲と機関拳銃の違いをパラメータの違いで表現しようとすると、破綻します。
これは数学的には直線上にはあっても概念的な特異点を越えているために起きます。この問題への解決法として等比数列で標記するゲームもありますが、人類はいまだかつて、この問題を解決できていません。
Aの魔法陣は、今は亡き多摩豊さんが生前おっしゃってたこの問題に、今現在において唯一まじめに答えを出そうとしている(バカ)システムのため、この問題を完全とは言えないまでも、無矛盾に解決することに成功しています。これはそれまでファクターに入ってない概念というファクターを含んでゲームシステムが設計されているために成立しています。
この章で対策される問題点、疑問
- サイコロを一杯振る方がいいに決まっている。
Aの魔法陣ではサイコロによる判定は不確実な手段であり、できるなら回避が望ましいとされているものです。
これはサイコロの出目で1が自動失敗になることから発生します。
自動失敗の確率 | |
サイコロ1個 | 16.7% |
サイコロ2個 | 30% |
サイコロ3個 | 50% |
通常、サイコロを使った判定で一番失敗する確率が高いのはこの1の目が出て自動失敗の失敗するケースです。
逆に言えば通常のケースで、ダイスを振ってもなお中間成功にも届かないケースはまれにしかありません。それぐらいサイコロは強力にしてあります。期待値で1.5倍、最大で3倍の値を出すこともあるのです。
同時に、セッションデザイナーは深く考えなくても、サイコロの出目で赤(1のこと)が出た時は失敗と見なせるように作ってあります。
ちょっと具体例として、難易度3と5の場合で、サイコロを使用した場合と使用しない場合、少し使用した場合の成功率の変化を見て見ましょう。
以下をご覧ください。
難易度3 の時 | |||
成功要素1 | 1d6で6の時成功(16.7%) | 1、2で失敗(33%) | 3、4、5(50%)で中間判定 |
成功要素2 | 1d6+2で4以上の出目で成功(50%) | 1で失敗(16.7%) | 2、3で中間判定(33%) |
成功要素3 | 自動成功(固定値のみで成功) |
難易度5 の時 | |||
成功要素1 | 1d6で5以上の出目の時中間判定(33%) | 1から4で失敗(67%) | |
成功要素2 | 1d6+2で成功率は0%、1で失敗(16.7%) | 2、3、4、5、6で中間判定(33%) | それ以外中間判定(50%) | 2d6で10以上の出目で成功(16.7%) | 自動失敗(1が出る)+2d6で4以下の目で失敗(33%) |
成功要素3 | 全部固定で中間判定 | ||
1d6+4で6の出目で成功(16.7%) | 1の出目で失敗(16.7%) | 2から5の出目で中間判定(50%) | |
2d6+2で8以上の出目で成功(41.6%) | いずれか1の出目で自動失敗(30.5%) | それ以外で中間判定(27.8%) |
こうしてみると、場合によってダイスを振ればいい時もあれば、一個だけ振るのが良い場合、2個振るほうがいい場合など、いろいろな状況があり得ることがわかるでしょう。