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これが私たちの仕事ですから
桝田 省治

 今朝見た夢。
 舞台は、大きなリゾートホテル。
 増改築が繰りかえされ、廊下は迷路のよう。
 新館のフロントから旧館の端まで行くのに十五分くらいかかる。
 おりしも台風のさなか。
 登場人物は、ルームサービスの食事を運ぶ係の男ふたり。
 今年入社したばかりの新人と先輩。
 ルームサービス終了時間の十秒くらい前に注文が入る。
 注文は、コーンスープ二皿のみ。
 運ぶ先は、車椅子の老婆とその孫娘の部屋。
 泊まっている部屋は、旧館の一番端。厨房から一番遠い。

 ようするに冷めないうちに、男ふたりがスープを届けるだけの話。
 ところが途中で停電になって、エレベータが止まり、ワゴン車が使えなくなり手で運ばなければならない。
 旧館につながる地下道が水没していて、土砂降りの地上を歩かなければならない。
 そういう困難が次々に二人の身にふりかかる。
 で、新人はくじけそうになる。
 だが、そのたびに先輩は笑顔でこう言う。
「これが私たちの仕事ですから」

(ちなみに僕は登場してません。どこからかただ見てるだけね)
 いや、もうベタベタの展開なんだけど、なにしろ夢。
 僕は、手に汗握る思いで見てましたよ。

 で、やっと旧館。注文した客の部屋は目の前。
 そこで地震。
 それでもコーンスープの皿を必死に守る。
 ところが……

 目の前に地割れ。覗き込むと底にはマグマが見える。

 さすがに「ありえん」と自分の夢にツッコミを入れた。
 自分の夢にツッコミを入れると、たいていそこで目が覚めるのだけど、今回は続いた。

 先輩は、そこでスープと新人を守るために命を落とす。
 新人は涙を拭きながら立ち上がると、先輩の皿もひとりで持って、やっと目的の部屋に辿りつく。
 ドアをノックする。出てきたのはきれいな若い女性。
 新人は笑顔で
「遅くなりました」
 当然、労いの言葉が女性から新人にかけられる。
 でも新人は、こう言うわけだ。
「これが私たちの仕事ですから」

 久しぶりに目が覚めてから腹を抱えて笑ったゾ。