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4時間分のデータが消えた
桝田 省治

 お蔵入りになっていたゲームのシナリオを一度解体し、再構成する形で小説を書いている。
 ここ3日ほど、煮詰まっててあまり筆が進んでいなかったのが、今日になって調子が戻ってきた。
 4時間ほど小説の原稿を書き進めたところで、娘を風呂に入れる。
 その間に妻が同PCでインターネットの懸賞のサイトか何かを見ていたら、フリーズしたらしい。
 今日、どれくらい調子がよかったかといえば「4時間ほどセーブするのを忘れていた」ほどだ(笑)。
「あーぁ」という話だと思った方、残念。これくらいのこと、僕にとっては、どうということはありません。
 まだワ-プロ、確かシャープの書院を使っていた頃、8時間分のシナリオ原稿をセーブしようとして消したことがある。
 内容は、ネクストキングのカモミールというキャラクターの台詞ぜんぶだったかな。
 そのときの脱力感と言ったら…。
 が、しかし、凹んでいても仕方ない。というか、凹んでいる間に1行でも思い出して書いたほうがまだマシと思い直す。
 で、5時間くらいで全部、書けた。我ながらアレはすごい集中力だった。
 実は僕が原稿を書き直していた頃、アルファ・システムのプログラマーはそのワープロのハードディスクから消去されたデータをサルベージしていた。そして成功。さすがである。
 翌日、僕が新たに書いた原稿とサルベージされた元の原稿を見比べたところ96%くらいの一致率で、かつ新しい原稿のほうが出来がよかった。
 …という経験が8年ほど前にある。
 こういうときは焦っちゃダメなんだよ。
 今、日記を書いているくらいだから、4時間分の原稿はすでにあらかた修復されている。
 はずなんだけど、どーしても1単語、違う気がするんだな。
 うーーむ、なんだっけ?

 その箇所とは…。
 あるキャラクターが敵に首をはねられた後、仲間にその首を拾われるのだけど、その仲間と言うのがとても酷いやつらで、その首でキャッチボールを始める、という場面があって、空中に放り投げられた首が仲間に文句を言うんだ。
 この文句の言い方の描写を最初は「喚く」としてたのだけど、これを別の言い方に差し替えたということまでは覚えている。
 だが、変えたことは覚えていても、どう変えたのかが思い出せない。
「わめく」と開いた? 「騒ぐ」か「叫ぶ」か? いや違うと一晩モンモンとしながら寝て、ホントついさっき
「がなる」だあああ!と、ひとり心の中で、ガッツポーズ。

迷っている自分が好き
桝田 省治

 来月、某所で講演することになりそうなので、ちょっとずつネタを整理していこうと思う。
 話の内容は、まあ、僕に期待されるのは、当然ながらゲーム制作まわりのことだ。
 ゲームというのはデザインする側から言えば「お客さんに何でどう葛藤してもらい、その結果にいかに満足してもらうか」だと僕は思っている。
 で、タイトルの「迷っている自分が好き」である。
 AかBを選択するシーンは日常でも頻繁にある。だが、AかBの選択で葛藤したり、迷いが生じることは、そうそうない。
 あなたがもし今、AかBか迷っていて、かつAもBもあなたにとってマイナスよりもプラスになる可能性が高いと思うなら、その迷いは、ゲームのネタになる。
 たとえば、中学受験を控えた息子の志望校選びなんてのは、本人の適正やら校風、授業料、通学時間など、それなりに判断材料が豊富で、かつ制限時間があって、上記の条件にわりと合う。
 受験生である息子には悪いけど、半年くらいは楽しめた。
 合格発表当日なんて、ここ10年味わったことがないドキドキ感を思い出せたな。

俺屍の移植および続編
桝田 省治

 去年の春先から、片手で足りないくらいのメーカーと交渉している。
 どこも興味は示してくれるものの、未だ話がまとまっていない。
 買うかもしれない100人と、買う気マンマンの100人では購買層として質が違うのは明らかだ。
 だが、この違いをデータで証明するのはけっこう難しい。
 仮に証明できたとしても、それをクライアントに理解させるのは、さらに難しい。
 俺屍が大好きで、おもしろい投資先を探しているという方をご存知なら、A社のS社長に紹介してあげてよ。
 いや、ほんとに。

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