■ルージュのワガママ×シオンの甲斐性!?


―ルージュって、ワガママかと思いきや、わりとわかってモノを言ってるところがありますよね。

 僕が思うには、ワガママも使っていい武器なんだよ。よく僕は女性に「男の土俵にわざわざ乗って闘うな」って言うの。自分のルールで闘ったり、自分しか持ってない武器で闘うほうが、絶対に有利なんだよ。泣き落としが効くなら泣き落とせばいいし、ワガママで通 せるんならワガママでいいじゃん(笑)。後のことは、勝ってから考えりゃいいんだよ。男だって、そうやってやってきたんだから。


―オープニングでワガママなお姫様として出てきて、でも「もしものときは、わたしを殺してでも止めンのよ」って言うじゃないですか。アレを見て、これはおいしいところをつかんでるなと思いましたね。ワガママだけどちゃんと背負ってるモノが自分でわかってるんだなぁって、ジーンと来ました。


 彼女のワガママって、結局のところ、シオンだけに向けられてるんだよね。信頼されてるんだよ。聞いてあげられる範囲ギリギリのワガママを言われるのって、楽しいよ、経験上(笑)。



―そんなこと笑顔で言われても(笑)。

 子供だったり奥さんだったりね。ゼッタイできっこないことを言われても途方に暮れるけど(笑)。



―だから、主人公とプレイヤーキャラクターが別 なんですね。

 今回は、そこも考えたんだよ。僕のゲームではプレイヤーキャラは、今までだったらほとんど喋らない存在だったんだけど、喋らせるのもアリかなぁと思って。でも、それでなくても一本道のお話なのに、さらに勝手にプレイヤーキャラが喋りだしたら、なんだか興が足りない。で、今みたいな方式(※注:プレイヤーがシオンの話す言葉を選べる)を考えた。アレは、シオン役の関くんが笑わせてくれたよね。シナリオにも折々で介入できたり、成功してると思うな。


―ドラマ的には、一番難しいポイントですよね。プレイヤーのキャラが不安定になりがちだとも思うんですけど。

 プレイヤーは、シオンになりきるというより、シオンを応援すればいいと思うんだよね。女の子だったら、ルージュに感情移入しつつ、そのルージュを支えるシオンを応援する、っていうスタンスが楽しいと思う。



―シオンっていうキャラクターの演出をつけるようなイメージですね。


 そうだね。だからシオンは、意外に人気出ると思うよ。
 シオンって、わりと明確なイメージがあったんだよ。いまどきの男の子にありがちで、自分では率先して動かないけど、相乗りはするタイプ(笑)。演劇でも主人公より木をやりたがるような、あるいは出演するより音効とか書き割りを一所懸命作っちゃうような人。そういうイメージだったんだよね。普通 だったら、脇にいる人なんだよ。寒いシャレも含めて(笑)、ゲームのキャラクターとしては、ユニークだと思うよ。


桝田省治のお仕事部屋風景〜その2
仕事机の上は 異次元空間!?(写真奥に桝田氏が!)



■ルージュのワガママ×シオンの甲斐性!?

 ヘンな話だけど、『暴プリ』って、ゲームデザイナー的に見ると、あんまり面 白くなる構造じゃないんだよ。一本道のお話があって戦闘があって、の繰り返し。これって、ちぐはぐなモノができやすい構造なんだ。実際にこのテの構造のゲームって、そうなっちゃってることが多いんだよね。

 その中でわりと成功しているのは、例えば『サクラ大戦』(発売:セガ)、あるいは『タクティクス オウガ』(発売:クエスト)。ストーリーと戦闘のどっちに重きを置いているかは別 として。『サクラ大戦』は、戦闘はあくまで演出のひとつとして置いてあって、中心はお話を展開してるモノだし。で、『サクラ大戦』の成功には、ちゃんと理由がある。それと『暴プリ』との共通 点って――『暴プリ』が成功と言われることになったら、だけど――「作りこみ」なんだよね。人を楽しませようというベクトルの情報量 の多さ、密度の差なんだよ。



―「作りこみ」こそがキモであると。


 こういう構造のゲームって、ゲームであることに頼りがちなんだよ。本来だったら戦闘モード自体なくして、小説なりアニメなりにすればコンパクトにできるんだけど、ゲームとして売るために戦闘なんかをところどころに入れている。で、失敗したゲームって、それを入れた段階で満足しちゃって、お話の部分が映画やアニメに比べて薄いんだよ。ゲームっぽい部分が入っていれば、それでアニメや映画と差別 化できてる、と勘違いしてるんだよね。だから、ほとんど失敗しちゃってるんだよ。  その点『暴プリ』は、僕が思ってたのより、何倍も密度が高くて、濃厚。その部分は、ノリを各スタッフが自分なりに消化して、思い切りよくやってくれてるからだと思うんだ。 ―同じ一本道なら、周りの情報は豊かなほうがいい、ってことですね。  まあ物理的な景色なんかはあんまり関係ないけどね。人が興味を持つモノって、やっぱり人なんだよ。『暴プリ』では、「このキャラはこういう人だ」っていう情報を、絵を描く人は絵を描く人で、モーションをつける人はモーションをつける人で、やらなくてもいいところまで目一杯やってる。だから、DVD一枚じゃ収まらなくなりそうなんだけど(笑)。



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