

■桝田省治、桜瀬琥姫&芝村裕吏を語る
―桜瀬さんは、一緒にお仕事をしていて、どんな印象でしたか。
絵描きとしてはいわゆる売れセンに近いと思うけど、彼女自身はリアリスト。人間の観察のしかたに長けてる。だから彼女の絵って、美男美女的な記号もいっぱいあるけど、そこから微妙に外したところを描けるんだよね。その辺が面
白い。 今まで桜瀬さんが描いたモノってわりとそういう要素が薄かったと思うな。たぶんあんまり求められて来なかったんだよ。で、僕がシナリオやらセリフやらを書いて、それに対して彼女は、典型的な美男美女から外れた、焦ったり怒ったりの似合うキャラクターを描いてくれた。僕らは、いいコンビだと思うよ!
―アルファ・システムの芝村さんについては、どんな印象をお持ちですか。
前回は、芝村さんの語る桝田さん像を、好き勝手にお聞きしたんですけど。
何て言ってた?(笑)
―飲み屋で熱く語る話とか、決めてたことを勝手に変えちゃう話とか(笑)。話してるうちにお互い熱くなって、芝村さんも時計捨てちゃったりとか(笑)。
それ、覚えがないんだよ。僕は酔っ払うことってまずないから...。
―じゃあ芝村さんが酔ってたんですか(笑)。
だと思うよ。あるいは僕ではない誰かと勘違いしてるか(笑)。僕もアルファに行ったら3回に1回はみんなで飲みに行くけど、記憶が飛ぶほど酔っ払ったことはないよ。
―付き合いは長いんですか?
けっこう長いよ。彼がアルファに入った頃から知ってるから。7〜8年前かな。
―当時の芝村さんは、どんな感じでしたか。
全然変わんない。だから当時は、口だけのヤツなのか、ホントに実力があるのかがわからない男だった。アルファって、偉い人や年上の人にプログラマー出身者が並んでて、数的にはグラフィッカーが多い。企画の人間って(芝村氏を含めて)4〜5人しかいなくて、みんな若いから、立場的に弱いんだよ。だけど、いつかはアルファ独自のゲームを作りたいと望んでいた。そのひとつの形が『ガンパレード・マーチ』。僕が熊本にいた1年の間に、いろいろとおせっかいもしてたの。大枠の考え方から実践的なポイント、マーケットの見方までね。ま、彼自身が僕の話をどのくらい聞いていたかはわからないけど(笑)、僕にとってはある意味、優秀な外弟子の一人なんだよ。もちろん感性は違うけど、アイデアを詰めていくときの手法なんかは、いくぶんかは吸収したんじゃないかなぁ。

桝田省治のお仕事部屋風景〜その3
もの凄い書類、書籍の数。さすが!
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■制作スタッフ+プレイヤー=『暴プリ』
―今回の『暴プリ』で、アルファさんに一番求めたものって何ですか。
いつもと一緒。まず、このゲームは何をサービスするものなのか、その一番大事なところをちゃんと確認しあって、あとはお互いの仕事の分担を決める。さらにアルファが担当する部分において絶対外しちゃいけないところを確認しあって、出来上がったモノについて話し合う。いつものことだよ。
―桜瀬さんに関しては。
特に変わった注文はしてない。個別の部分は、『暴プリ』に限らず、パートを任せる際に指針だけしっかり伝えたら、あとは細かいこと言わないんだよ。出来上がってきたモノが僕の予想とまったく違っていても、必要なことだけ外してなければ、それは全然OK。お互いプロだもん!
―不協和音も楽しめちゃう、ってことでしょうか。
不協和音じゃないんだよね。これは僕の持論なんだけど、ゲームって未完成なほうが楽しい。最後にプレイヤーが触ったり、想像したりすることで初めて完成するようなモノのほうが、僕はゲームらしいと思う。その部分で、スタッフの間で大きな目標だけ統一できていれば、あとは多少ズレてたり、荒れてたほうが面白い。
例えば歌なら、キッチリとリズムを刻んで正確なメロディをユニゾンで奏でるより、多少リズムが狂ってたりズレてたりしたほうが、ノリがいいじゃん。だから、僕やら桜瀬さん、アルファ、ポリゴンマジックがいて、そこにプレイヤーが入ったものが『暴れん坊プリンセス』なんだよね。
―でも、それだけ相手を信用することができないタイプの人も多いですから、けっこう凄いことだと思うんですけど。
プロとして、一定のレベルまでは放っといてもできる人たちだから、それ以上の部分の枝葉を伸ばせるなら、自由にやってもらったほうが結果
はいいんだよ。もちろん、放っといたら50点くらいしかできない人には、こうしろって言わないとダメだけど。僕がキッチリ指示すると、たぶん80点とか70点で止まっちゃう。でも自分の頭で考えると120点くらいまで行くときがある。集団作業って、そこがエキサイティングだよね。
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