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「初音ミク project DIVA」雑感
桝田 省治

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(C)SEGA (C)Crypton Future Media, Inc.

 巷では「絶賛品切れ中!」の噂も聞く「初音ミク project DIVA」をもらったので、値段分くらいは律儀に宣伝しておくよ。

 PCに人の声で擬似的に歌をうたわせることができるヤマハのソフトがあり、
 そのソフトに、ミクというかわいい女の子のキャラクターを当てることを思いついた人がいて、
 それを買っちゃう人、面白がる人、使いこなせる人が日本には十万の単位でいて、
 ニコ動というかつては考えられなかった特徴をいくつももちながら、実にわかりやすい創作発表、あるいはコミュニケーションの場がいつの間にかできあがり、
 今度はそのミクにわりと簡単に振り付けを施せるソフトがゲームのカタチを借りて発売された。
 経緯・状況としては、多少乱暴だが、おおよそこんなところだと理解している。

 十年前の技術ではこの状況は成立せず、五年前なら技術はあったろうが、まだ市場はなかったと思える。
 それに、ボーカロイドのオリジナルを考えた人、ミクというキャラを思いついた人、ニコ動を立ち上げた人、誰もこんなものまで世に出るなんて想像してなかったのは間違いない。
 そう考えると、このソフトを買って楽しんでいる人たちは、やや大げさな言い方になるが、時代に立ち会ったという意味で、2009年にこの日本に生まれていた偶然に感謝してもいいのかもしれない。

 開発した連中をよく知っているから、あえて言えば、「初音ミク project DIVA」のゲーム部分は、演出的には目新しさが多少あるもののゲームとしては凡庸だし欠点も多々ある。
 もちろんシステムとして凡庸であろうが、どれだけ欠点があろうが、それを補ってあまりある美点があれば、嗜好品であるゲームは商品として十分に成立する。
 ただし、ミクというキャラが歌って踊るという、ゲームシステムと本来無関係な要素がなければ、明らかに商品として成立しないという意味で、本作のゲーム部分は、ゲームとして売っているにもかかわらず、実は「オマケ」でしかない。
 なかなか微妙、かつ絶妙なポジションにギリギリで立っている。実に危ういし、そこが面白くもある。

 十年たって振り返ったとき、リンダキューブみたいな徒花になっているのか、もしかしたらターニングポイントになっているのか、ボクにはわからないけれど、とりあえず今は、ミクが可愛いからOKだと思う。