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ふりだしに戻る 上下 ジャック・フィニー著
桝田 省治

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 いわゆるタイムトラベル物としては、もはや古典の部類に入るのかもしれない。
 たぶん20年くらい、もしかしたらもっと前かもしれない、前に一度読んだことがある。
 が、今やってる仕事の資料として、一応再読しておくべきだろうと思いたち、連休前からパラパラとページを繰り始めた。

 昔読んだときは、冒頭からワクワクが止まらなかったという鮮烈な記憶があったが、今読むとそうでもない。
 40年前のタイムトラベルは、いかにしてタイムトラベルするかという理屈付けやその準備に200ページが必要だったんだなあ、とため息。
 それに、タイムトラベル事前事後の世界の違いを明確にするためには、必要だとわかっているが、それでも町並みや人々の服装の長い長い長い描写にややウンザリ。
 ついでに、風景や人物の描写が思い切りよく省略された『魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」』というネット上の小説を並行して読んでいたせいもあって、亀の歩みを眺めるじれったさを感じた。

 が、下巻に入ってからは、やっぱり面白い。
 本作の後に書かれたタイムイトラベル物の、ワクワク、あるいは切なさ、そういうものが既に提示されている。
 感想を一言で表せば、「ジャック・フィニー、すげえ」だ。

 ところで、ツイッターを見ている方には今さらかもしれないが、『魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」』書籍化プロジェクトを勢いで立ち上げた。