●七回死んだ男 西澤保彦著
ある1日を何度も繰り返す男の話。
その繰り返す日に、遺産相続をめぐる殺人事件が起きる。
小説に涙とか汗とか情熱と哲学とか萌えとか、そういう悩ましいもんじゃなく、純粋に娯楽だけを求めるなら、ぜひ読むべき1冊。
感動の類は、一切ナシ。
こういうのがいいね、よけいな余韻がなくて。
あ~面白かった。
●妻は、くノ一 風野真知雄著
「奥さまは魔女」じゃなくて「妻は、くノ一」。
タイトルの引きに負けて内容も確かめずについ買ってしまった。
が、シリーズで刊行されることが1巻のときから決まってたようだ。
1巻目は、主要登場人物の顔見せ的な紹介のみ。
顔見せだけなので、後々、巨大な時代の渦に主人公が翻弄されたりなんかして……で終わってる。
事件らしい事件もない。はっきり言うと盛り上がらない。
いや、でもね、なにしろ、ほら……
「妻は、くノ一」だから、続きに期待せずにはいられないのよ、昭和生まれの男としては。
タイトルって大事だよなあ、とつくづく思う。
●フリーランチの時代 小川一水著
SF用語も頻繁に出てくるが、主人公も著者も、理性的で優しくユーモアがあり前向きな人たちなので安心して楽しめる。
たぶん、そのあたりが敷居の高いイメージがあるSFにしては、幅広い層に人気がある理由なのだろう。
よく管理されたテーマパークのような趣きだ。
反面、小川くんの作品を読むと、吐き気がするような苦味や酸味成分が欲しくなり、死んでもわかりあえない悪が登場する話や理不尽な展開の酷い話を読みたくなる。
その点、先日読んだ「天冥の標」は適度に行儀が悪く、僕の基準では味のバランスがよかった。
美味いのだが、何を食わされているのかわからなさ加減がいい。
次はいつ出るんだろ?
楽しみだ。
あ、「フリーランチの時代」の感想になってないw