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先週、読んだ本
桝田 省治

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●封印された三蔵法師の謎 テレビ東京編編集

 同タイトルのドキュメンタリー番組を書籍化したものだ。
 三蔵法師については、仕事の資料として以前にけっこうしらべたつもりだったが、それでもいくつか知らない事柄や新しい解釈が出てきて、その点は興味深かった。
 ただ、バラエティやスポーツ、ドキュメンタリーも含めて、僕はテレビ番組に対して「バカの熱量」を常に期待している。
 その点では、この本は語り手あるいは番組の制作者の「なんで俺がこれを面白いと思ったかというとだな」とか「俺ってバカだからこんなこともまで本気でやっちゃったぜ」とか、そのあたりのしゃしゃり出方が半端に感じた。
 たぶん僕は、三蔵法師よりそれに興味をもった、あるいはそれをたくさんの人に知らせようと思い立った、同時代に生きている企画者や制作者の考え方、生き方に興味があるんだね。

●解体諸因 西澤保彦著

 一見猟奇的に見える様々なバラバラ殺人事件のバラバラにした必然をひたすら推理する短編集。
 僕はこの試行実験ともいえる趣向に笑い転げたが、キャラの掘り下げとか奇怪な事件の背景とか手に汗握るサスペンスとか、そういうのを期待する向きにはまったくお薦めできない。

 これに近い感覚は、一昔前に深夜にときどきやっていた芸能人の麻雀大会の「解説」だろうか。
 まず麻雀のルールや流れ、醍醐味などを知らないと当然ながら面白くもなんともない。
 捨て牌や現在の点数を見て他のプレイヤーの思惑を図るとか、自分の配牌を見て上がり役の可能性を探るとか、そういう推理や計算自体が実際のプレイよりもむしろ楽しいと感じる人しか、解説を聞いてもおそらく興味は持てない。
 で、プロというのは恐ろしいもので、素人が考えつかない可能性を披露してみせる。(ただし可能性なので予想通りになることはほとんどない)
 ゲームである麻雀の目的は勝つことのはずなのだが、ある意味、勝ち負けはどうでもいい面白さだ。

 本作も同様に、結果的に犯人逮捕や事件解決がなされる場合もあるが、それに至る過程に比べればどうでもいい。