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傷だらけのビーナ 試し読み1
桝田 省治

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 12月17日エンターブレインより、僕の新刊「傷だらけのビーナ」が発売されます。
 序章1章分を本日から毎日1節ずつ公開していきますので、読んでください。

●粗筋
女だてらに兵士になりたい少女と、男尊女卑のセクハラオヤジが一千の敵を相手にふたりで篭城【ルビ:ろうじょう】戦に挑む!!


目次

序章 チグル村
[精霊の棲む山]
[チグルの虐殺]

一章 王都マリーシャ
[出陣式]
[港の秘密基地]
[再会]
[もうひとつの再会]
[魔物]
[エルの決断]

二章 旅路
[馬車の荷台]
[零【ルビ:ゼロ】小隊]
[傭兵くずれ]
[楽園の村]
[入城]

三章 迎撃準備
[指揮官ロウザイ]
[密偵]
[案山子作り]
[惜別]
[落日]

四章 ボバドン作戦
[物見櫓の上]
[戦車爆走]
[再び、物見櫓の上]
[石切り場の人影]
[血模様]

五章 魔女
[朝まだ来]
[階段の攻防]
[逆襲]
[ビーナとサコト]
[肉迫]
[百爆血]
[去来]

六章 白兵戦
[思わぬ提言と依頼]
[交渉]
[開門]
[罠【ルビ:トラップ】]
[契約]
[絆]

終章 三ヵ月後
[輝く海]

後書き


序章 チグル村


[精霊の棲む山]


 何かの顔だ。
 目のかわりに開けられたふたつの大きな穴には、深い闇が宿っていた。
 広い額に刻まれた太い皺が、何匹もの蛇がのたくっているように見える。
 はげあがり、額との境目がなくなった頭の上に残る毛はわずかだが、頭の左右はボサボサの真っ黒な髪がおおい、だらりと長く垂れさがっている。そこから突きだしているのは、手のひらほどもある先のとがった耳だ。
 三角の鼻は、額やしゃくれた顎よりも低く、丸い穴を正面に向けている。
 なまめかしい赤で細く縁どられた口は、耳の近くまで裂け、大きく開いている。その中に山犬を思わせる鋭い歯がズラリと並んでいて、ひときわ大きな牙が上下に二対ずつはえていた。
 その表情は、怒りにまかせて叫んでいるようでもあり、世の中のすべてを笑いとばしているようでもあった。
 これは、山の民に豊かな恵みをもたらしてくれる精霊【ルビ:ボンゴロス】たちがもつ、もうひとつの恐ろしい顔、
 ――魔物の面だ。
 この異形の面が、少女が歩【ルビ:ほ】を進めるたびに、まだ丸みが目立たない腰のあたりで踊るように揺れている。
 腰にぶらさげた面と背中にまわした小ぶりの弓と矢筒を除けば、少女が身につけているのは、短い帯で軽く結んだだけの袖がない麻の着物一枚だけ。大きな魔物の面がなければお尻が見えそうなほど、着物の丈が極端に短いが、気にする素振りはまったくない。
 少女は、蒸すような暑さのなか、生い茂る草木をかきわけながら一心に山を登っていく。
 かなり急な斜面にもかかわらず、その足どりは子馬が跳ねるように軽快だ。息も上がっていないし、男の子のように短く刈った髪には一滴の汗すらかいていない。それどころか、白い歯がこぼれる口元には、楽しげな笑みさえ浮かんでいた。
 少女の名は、ビーナ。
 近くにある人口六十人ほどの小さな集落、チグル村に暮らす九歳になったばかりの娘だ。
 その腰に結わえられた奇怪な面は、昨夜の祭りでビーナがかぶっていたものだった。
 このあたりの山村では、新年を迎える前の夜に邪気をはらう追儺【ルビ:ついな】祭りが催される。恐ろしげな面をつけた魔物役を、笛や太鼓を盛大に鳴らして大騒ぎしながら村の外まで追いたてていく。
 魔物に扮するのは、たいてい子供。その理由は、魔物が村を出て行く際に、餅や菓子が供されるからだ。さらには、こわい顔の魔物ほどより多くの供物が集まる……となれば、そのごちそうを目当てに子供たちは競って恐ろしげな面作りに熱中する。これも、年の瀬の恒例行事だ。
 にぎやかだった大晦日から一夜明けると、うってかわって正月の三が日は静かに過ごすのが決まりになっている。家から出てはいけないし、大声も火を燃やすのも厳禁。村を無人に見せかけて、出ていった魔物たちが戻ってこないようにするためだ。
 だが、この風習は、酒を飲んで寝正月を決めこむ男たちや、煮炊きの家事から解放される女たちにはともかく、遊びたい盛りの子供には不評だった。とくに、一日たりとも太陽の下で走りまわらずにはおれない性質【ルビ:たち】のビーナには、死ぬほど退屈で半日と我慢ができなかった。
「母ちゃん、あたし、厠に行ってくるね」
「おまえ、正月だけは絶対に山に入るんじゃないよ」
「まさか!? そんなことしたらバチが当たるもんねえ」
 そう応えて家【ルビ:うち】を出たにもかかわらず、ビーナは村の下を流れる川には向かわず、迷うことなく山を登っていた。

 ビーナが足を止めたのは、ちょうど村の裏手に当たる山の中腹。そこに巨大なアカオの木がそびえ立っていた。山ノ神が住まうとされる神木だ。根元は、ビーナの家族が住む小屋よりもはるかに大きく、途中から二股に分かれた幹を下から見上げると、その偉容はさながら空を背負う巨人のようだ。
 草木が密集した森の中で、その周囲だけ地面が露出している。赤ん坊の頭に似た大きなコブにおおわれた根元には、ビーナより少し背の高い石造りの古い社祠がひっそりと建っていた。
「聖なる場所だから絶対に近づいてはいけないよ。神隠しにあうからね」
 大人たちから耳にタコができるほど聞かされていた、この場所こそがビーナの遊び場だった。
 背をそらせて巨木を見上げるビーナの顔は、あいかわらずニヤニヤしていた。実は、昨夜の祭りで、ビーナの面が断トツの一番人気だったのだ。
 人気の決め手は、大人がかぶれるほどの迫力満点の大きさだった。ビーナがつけると胸まで魔物の髪がおおい、大きな顔から直接手足がはえているように見えた。
 おかげで、ひとつ違いの兄に分けてもまだ余るほどの供物を手に入れたし、めったにほめない父にまで「本物みたいだ」と言われて、ビーナは鼻高々だった。
 けれど、思い出し笑いの理由は、それだけではない。
「ねえ、ボンゴロス!! 本物【本物に傍点】、みたいだってさ!!」
 ビーナは、陽光がこぼれおちる木の上に向かって叫ぶと、サンダルを脱いで祠の屋根によじのぼった。
 屋根の上側には、山ノ神を表す△の形が刻まれている。その印を蹴るようにして、ビーナは神木に飛びうつった。毎日のように登っているから、幹を這うイチジクのツルや足場になる洞の位置は目をつぶっていてもわかる。ツルをつかみ、丸出しの腕と膝で幹にしがみつくようにして、ビーナはどんどん上を目指していた。
 正月が終われば、祭りに使った面は、村の広場に集められて焚き火に放りこまれる。残念ながらどんなに素晴らしい出来であっても例外はない。その火で煮る芋汁粉の甘さは楽しみだったが、ひと月もかけて苦心して作った面だ、やっぱり惜しい。
 せめて燃やす前に見せておきたい相手がいた。それは面と同じ顔をした、ビーナの秘密の友だちだ。

 ビーナには精霊【ルビ:ボンゴロス】が見えた。
 ……といっても、山で生まれ育った子供ならたいてい見える。ただし、六歳を過ぎても精霊が見える者は珍しい。まして九歳になってもこの能力を残しているのは、村ではもうビーナだけだった。
 精霊が見えなくなった途端、精霊が見えていたことすらみんな忘れてしまう。そして、同じ精霊を勝手に神さまとして祭りあげてみたり、時には魔物として無意味に追い払おうとする。
 これがビーナには不思議でならなかった。
 だが、そんな疑問を口にしようものなら、両親も兄も友だちも「昼間っから夢を見てんじゃねーよ。そんな暇があったら働け」と馬鹿にする。だから、ビーナは精霊の話題を避けていた。
 でも、精霊は確かにいる。それも、いっぱい、いつも、すぐそばにいる。
 神さまとあがめられようが魔物と恐れられようが、精霊は精霊だ。神さまでも魔物でもない。善いも悪いもない。人間の道徳とは元もと無縁の存在だ。気性が激しく気分にムラがあり、よく笑いよく怒りよく泣く。たまにひどいいたずらもするけれど、それはお互いさまだ。
 なにより遊び相手として最高だ。とくに隠れん坊は、人間の子供とは面白さの次元が違う。連中ときたら、木にもぐり土の中を走り風に溶けて、あっちとこっちの世界を行き来するのだから、本気で探さないとなかなか見つけられない。
 逆に精霊たちがビーナを探すときも面白い。目の前にいても息を止めてじっとしていれば、精霊にはビーナの姿が見えないのだ。
 精霊は、人間と住む世界が違う。とうぜん、何から何まで別だ。人間の物差しでは測れない。それが大人たちには、わからないらしい。自分や前例を基準にする。目に見えない、手で触れない、そんな話は聞いたことがない……、たったそれだけのことで否定しようとする。
 そっか……。
 あたしと精霊は、似たもの同士なのかもしれないね。だから気が合うのかも?
 ビーナは木を登っている途中で、ふとそんな気がした。そして、嫌いな言葉を思い出す。
『女には無理!!』
 ビーナが何かやろうとするたび、話も聞かず試しもしないで、大人、とくに男がすぐに止める。これも男と女、大人と子供で物差しが違うせいなのだろう。
 たとえば、狩りだ。ビーナの歳になれば、男の子なら父親や兄と一緒に狩りに出る。
 だが、ビーナが「あたしも連れてって」と頼んでも、父も兄も「女には無理!!」と頭から決めつけた。日頃はビーナの味方をしてくれる母までが「やめときな」とうろたえる。それも、村の子供でビーナが一番正確に素早く矢を射ることも、実はビーナのほうが兄よりも弓の腕前が上だということも承知しているくせにだ。
 ビーナは、大きく左右に分かれた木の股にまたがると、ため息をついた。
 いっそのこと、精霊の世界に行ってしまうのは、どうだろう?
 あんなにいろんな種類の精霊が住んでいて、それぞれ好き勝手に楽しくやっているようだから、きっとあっち側には「女には無理!!」と言いだす人はいないと思う。
 でも、枯れた木や死んだ動物や人が精霊になるという人もいる。あっちで生まれ変わるのを待つのだそうだ。だとしたら、行儀に口うるさかったおばあちゃんが、待ちかまえているかもしれない。それは、もう勘弁してほしい……。
 本当はどうなんだろう? そうじゃないかもしれないし……。
 ――あたしも連れてってよ!!
 そう頼んだら、精霊たちはどんな顔をするのかな?
 ビーナは自分の思いつきに胸をドキドキさせながら、友だちの到着を待っていた。
 だが、今日に限って精霊は一匹も現れない、精霊の世界に退屈な正月なんてあるはずないのに。
 そういえば、今日はなんだかおかしかった。
 常ならビーナがここまで登ってくる間にも、精霊が何匹も身体中にまとわりついてくる。髪を引っぱったり、脇腹をくすぐってきたり、お尻に噛みつくヤツもいる。
 精霊は気まぐれだから、今日のようになかなかやって来ない日も、もちろんたまにはあるけど……。それにしたって気配すら感じない。
 かわりに突風が吹いた。湿り気を含んだ生ぬるい風だ。
 ビーナが座っている木は巨大だから、太い幹は微動だにしない。だが、枝がいっせいにざわめき、今朝降った雨の雫がビーナの全身を容赦なく濡らした。
 精霊のいたずらだろう。最初はそう思った。
 だけど、何かが違う。鳥の声がやんで、森全体に重苦しい静けさがじわじわとしみこんでいる。なんともイヤな感じだ。
 ビーナは、少し心細くなって顔をあげた。いつの間にか日が陰っていた。じきに雨が降りだしそうだ。葉の影が暗い。その生い茂った葉のすき間から、わずかに村が見えた。
「あっれ~? どうして?」
 ビーナが思わず声を出したのは、家々から煙が立ちのぼっていたからだ。それも一軒や二軒ではない。正月の三日間は煮炊き禁止のはずなのに……ヘンだ。
 そう気づいたとき、山の下から声が突きあげるように飛んできた。
 それは大勢の怒声と悲鳴だ。
 村の中央にある広場を誰かが駆けている。それを数人が追いかけていく様がチラッと見えた。
 ――いったい何が起きてるの!?
 さっぱりわからない。それでも木を滑りおり、ビーナは村に向かって夢中で駆けだしていた。
 走りだした途端に、身体の前面にフワフワした形のないものが次々に衝突した。
 精霊だ。
 さっきまで気配も見せなかったくせに、急いでいる今ごろになって現れるなんてどういうつもりだろう?
 それにしても異常な数だ。ビーナの全身を包むほどたくさんの精霊が集まってきたのは初めてかもしれない。おかげで水中を走っているように足が重くて息苦しい。さらには、耳もとで聞こえる精霊のささやき声が、虫の羽音のようでかんにさわる。
「行ッチャ、ダメ」「ビーナ、森デ遊ボッ」「ホラ、押シクラマンジューダ♪」「帰ルト、バチガアタルゾ」「イイカラ遊ボーヨ」「ビーナ、戻レッテバ」「隠レン坊シヨッカ?」「オイラト遊ボーヤ、ビーナ」「イツモミタイニ楽シクヤロウゼ」「ネエ、遊ンデ、遊ンデ」「コラ、二度ト遊ンデヤラナイゾ」「ホーラ押セ、押セ」「行クナラ食ッチャウヨ」「森カラ出ルンジャンナイヨ」「バーカ、バーカ」「言ウコト聞ケ」「行クナッタラ」「行クナヨ」「行クナ」「行クナ」「行クナアアア」
 精霊の身勝手さや悪ふざけには慣れっこのつもりだったが、今日ばかりは我慢できない。
「うるさい!! あっちに行って!!」
 ビーナは思わず怒鳴り、見えない茂みをかきわけるように何度も大きく腕をふった。
 にぎやかな気配が少しずつ遠のき、身体が軽くなる。ビーナは、再び足を速めた。


(明日は、序章2[チグルの虐殺])
http://www.alfasystem.net/a_m/archives/279.html

ご予約はこちらから http://p.tl/Urbv

Twitterから抜粋、最近分
桝田 省治

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http://twitpic.com/35hltu - ←ここにあなたのお仕事の苦労や楽しさを書いてくれた方の中から20名に僕の新刊【傷だらけのビーナ】をプレゼント!まおゆうのランキングやゲームデザイン脳のCPが話題のようですが、こちらもよろしく。締め切りは12月7日24時。現在の当選確率20/95

 ここに書かれたコメントを読むと「世の中いろんな仕事があって成り立ってるんだなあ」と改めて気づかされて、なんだか元気をもらえる。プレゼントに応募するかどうかはともかく、ぜひ読んでみて。

12・17日発売の【傷だらけのビーナ】。上記CPが終わったら、序章と1章合わせて70ページ分くらい、毎日ちょっとずつ連載っぽく試し読みができるようにします。お楽しみに。


・どれだけ効果があるかはともかくこういう試みは面白いね。::あと335ツイートで、さらに100円引「ゲームデザイン脳 桝田省治の発想とワザ」ブックーポン #GaDeNobkp http://t.co/Y2XQ3OJ via @bookoupon
・個人のツイートじゃないんだから記事にするなら著者の名前を確かめるくらいはしろよ。調べないなら「枡田省治とかゆー人」とでも書けばいい。 RT グルーポン的な電子書籍の販促サイト「ブックーポン」が新登場 - インターネットコム http://t.co/0p1uffF via @jic_news


・他人様のTLを蹂躙した【俺屍R追加遺言200】もこれにて終了。連投するたびにフォローしてる人の数が目に見えて減るのがドキドキできて楽しい。続けて【俺屍2新遺言500】をやろうかとも思ったけど、システム周りの仕様書きのほうが急ぐので、また半年後くらいに唐突に始めます。
(抜粋)
【俺屍R追加遺言150】血のりと泥で汚れた武器を毎日せっせと磨いてきたのに、女を磨く暇は、てんでなかったねえ▽
【俺屍R追加遺言160】他人が嫌がることを考えてためらわずにとことんやる。戦場じゃ、嫌なヤツに徹しなさい▽
【俺屍R追加遺言170】世話になったね…▽
【俺屍R追加遺言180】もういいかい?…もういいよね▽
【俺屍R追加遺言190】私は、恨み言を並べて、泣きわめきながら死んでった…。そういうことにしてね▽そんなみっともない様をさらしたくなければ、「戦え」と伝えてちょうだい▽
【俺屍R追加遺言200】一番の親孝行は、親より先に死なねえこと。二番は孫を抱かせることだろうな▽

・【俺屍R】 http://p.tl/t8Z1 一族各人の趣味や特技。参考までに昨夜メモしたものです。書いてみて意外と難しかったのが「趣味」、面白かったのは「口癖」。新しいカテゴリーを思いつくと20くらい続けて出る。お願い:くれぐれも@で僕に飛ばさないでください。

・【俺屍R】リメイクのバランス調整のポイント3つ。1.特長を活かせば8つの職業どれも最後まで使える。2.術による攻撃が武器による攻撃と同じくらいの比重に。3.遺伝まわりの見直しで一芸二芸に秀でたキャラは出やすく、オールマイティキャラが出にくくなる。追記:陽炎と属性武器は弱める。
 陽炎に関しては、MAXまでかけてもときどきは敵の攻撃が当たる。属性武器のダメージは、踊り屋の桁数を間違えてるようなダメージが出なくなる。そんなイメージ。「使えねえ」にはならないが、「絶対」ではなくなり、他の選択肢と迷うことが増えるだろうな。

・「早く行けば午前中から打ち合せができる」と思い、6時台の飛行機を予約してから、それに乗るためにはうちを4時過ぎに出ないと間にあわないと気づく。4時かよ、4時はいつも寝る時刻だよ。

・熊本に2泊した。1日目に利用したホテルは、クレジットカードが使えない。部屋の電話が黒いダイヤル式、テレビのリモコンは電池切れ、シャンプーもリンスも販売すらされてない。そしてお湯が出なかった……。
 2日目に泊まったホテルは、1日目のホテルと1000円しか違わないのに、お湯が出たし朝食もついていたし、フロントのお姉さんが美人だった。


・アマゾンで「まおゆう1」が予約を受け付けていますが( http://p.tl/FrcU )、正式なタイトルは〈まおゆう魔王勇者〉で、1巻のサブタイトルが〈①「この我のものとなれ、勇者よ」「断る!」〉なのです。

・【まおゆう①】ジャケットも間にあってないくせにアマゾンのランキング34位ですってよ、奥様。最近の若い子って遠慮ってもんを知らないのかしらね?おかげで17日発売の「傷だらけのビーナ」がかすんじゃって痛し痒しですわ。

・今回僕はまおゆうの書籍化のプロデューサーみたいなもん。昔はどこの町内にも近所の年頃の娘に見合いを斡旋するのを趣味にしてるおばさんがいたものだが、「あら、ままれちゃん、とても似合うわよ、ぶふふ」とか言って晴れ着を強引に着せてしまう、無責任な楽しさがあったなw

・まおゆうの真の作者は病弱な文学少女「橙乃 ままれ」であり、「マーマレードサンド」のHNで掲示板に投稿していたのは兄。これは知ってる人は知っている事実だ。橙乃 ままれ本人と対談した@sasamotoU1さんや@SinjowKazmaさんが証言してくれるだろう。
 今後、「橙乃 ままれ」名義でむさい男がメディアに登場することもあるだろうが、気にしないでほしい。それは、病弱な文学少女「橙乃 ままれ」の代理の兄。ただのメッセンジャーだ。
 @sasamotoU1さんや@SinjowKazmaさんは、実は対談の前から作者が女性であることを見抜いていた。さすがの眼力である。笹本さんに至っては「まおゆうの作者は、白血病の美少女でなければならない!」と言い切った。


・先生はさらりと凄いことをおっしゃる RT @LiokoKihara 鍵盤はそこにある。そこを押さえれば音が出る。その音を欲していても、いなくても、音は出る。でも、演奏を聴けばすぐわかる。作曲家が音の並びを、和声の運びをなぜそうしたのか、考えた人とそうでない人の差。

・今月はお金がないと愚痴ってたら、なぜか今日の晩飯を、@HitoshiSakimotoくんがおごってくれることになったw ツイッターを始めてから思わぬ人からお誘いを受けることが増えたのは嬉しい。が、先に断っておく。僕は愛想のないただのおじさんだから実際に会うとたいていガッカリするよ。11/26

・妻は次男と口論になった際、次男が小学生のときに書いた、駄菓子を添えたサンタクロース宛の手紙をそらんじてやりこめる。「これ、よかったらどうぞ。たべかけだけど」

・俺屍はいわゆるバグはほとんどないものの、人間が作ったものなので細かなデータの入力ミスはいくつかある。だいたいは把握していたつもりでいたが、昨夜「今さらだけどさ」という前置きつきで長男から聞いたこともない新たなミスが3件も報告された。……あいつ、どれだけやりこんだと心配になる。

・さっき宮部さんの小説で「身すぎ世すぎ」という言葉を覚えた。

・受験も近いというのにさっぱり勉強しない次男に「おまえ、将来のこと少しは考えてんの?」と聞いてみたら「26歳で結婚する」と返事。なぜそこだけ具体的なんだ?

・徹夜して、修正や変更のリストを大急ぎで作り、関係各社にメールを送信したあとで、今日が休日と気づく……。寝よう。11/23

俺屍R 一族各人の趣味や特技
桝田 省治

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一族キャラのステータス画面に各人の趣味や特技を追加します。
表示スペースは、漢字仮名記号を含めて最大8文字。
形式は「カテゴリー:内容」。

ポイント。
・そういう人も中に入るだろう程度に珍しく、かと言ってヘンというほどでもない微妙なセン。
・老若男女共用。

書いてみてわかったこと。
・意外と「趣味」は難しい。「口癖」は面白い。
・新しいカテゴリーを思いつくと20くらい続けて出る。

最低400種類。できれば800種類を作成予定。
以下は、昨夜のメモ。これで150種ほど。

趣味:押し花
趣味:待ち伏せ
特技:逆立ち歩き
特技:けん玉
趣味:逆さ言葉
弱点:わき腹
得意:屁理屈
趣味:算術
自慢:暗算
趣味:一人で散歩
特技:竹馬
特技:食いだめ
自慢:爪の形
悩み:寝相の悪さ
特技:寝言で会話
苦手:早寝早起き
好物:ネギ
特技:値切る
特技:二度寝
座右の銘:節約
好物:梅干し
苦手:細長いモノ
弱点:うなじ
弱点:耳に吐息
悩み:かなり音痴
座右の銘:効率
尊敬する人:両親
趣味:石集め
特技:物マネ
口癖:死ねば!
特技:早食い
好物:白いご飯
口癖:ありゃりゃ
口癖:マジで?
特技:風鈴集め
口癖:絶望した
趣味:写教
好物:カエル
好物:ドジョウ
趣味:彫仏
好物:スズメ
好物:イナゴ
好物:蜂の子
憧れの人:AAA(AAAは他の一族キャラ名)
趣味:大工仕事
特技:裁縫
自慢:腕相撲
信念:高みの見物
好物:辛いもの
苦手:納豆
苦手:胡瓜の臭い
趣味:貯金
特技:うそ泣き
趣味:下ネタ
特徴:声がでかい
特徴:早口
趣味:掃除
趣味:整理整頓
趣味:妄想日記
趣味:洗濯
趣味:穴掘り
特技:帳尻あわせ
特技:立ち泳ぎ
口癖:早い話が
口癖:どうせ
苦手:ワサビ
趣味:水まき
信念:なぜばなる
信念:先手必勝
特技:鏡文字
自慢:記憶力
悩み:字が下手
日課:腕立て千回
好物:赤飯
好物:あんこ
好物:焼き芋
趣味:たき火
特技:似顔絵
自慢:眉の形
好物:たくあん
好物:昆布の佃煮
好物:なれ寿司
好物:棒だら煮
口癖:下手すりゃ
好物:蘇
好物:キジ
好物:タコ
好物:塩鮭
好物:栗きんとん
好物:ナツメ
口癖:面倒くさ
好物:干し柿
好物:タケノコ
口癖:ちなみに
口癖:ぶっちゃけ
口癖:なるはやで
口癖:なるほど
特技:空耳
悩み:独り言
夢:温泉巡り
悩み:貧乏ゆすり
座右の銘:平常心
特徴:毒舌
苦手:泣く子
夢:猫屋敷
口癖:ぜんぜん
口癖:とりあえず
口癖:絶対に
特技:やせ我慢
悩み:物忘れ
趣味:川釣り
特技:耳が動く
悪癖:爪をかむ
悪癖:深爪
苦手:箸の持ち方
趣味:うがい
悪癖:舌打ち
好物:豆腐
苦手:糠の臭い
苦手:ゴキブリ
自慢:腹筋
趣味:すずり集め
趣味:書写
趣味:昼寝
趣味:庭掃除
口癖:やっぱり
特技:草笛
夢:杜氏
得意:から騒ぎ
趣味:バカ騒ぎ
特技:太鼓
趣味:横笛
趣味:琵琶
得意:ダジャレ
口癖:やだね
趣味:お守り集め
趣味:包丁研ぎ
趣味:人形作り
趣味:折り紙
好物:かまぼこ
苦手:こんにゃく
日課:草むしり
日課:屋根に上る
趣味:木のぼり
趣味:アリの観察
趣味:墓参り
自慢:聞き上手
座右の銘:忍耐
夢:朝湯

Twitterから抜粋、最近分
桝田 省治

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・さっき嬉しい知らせがきました。正式な発表はメーカーからのインフォメーションを待ちますが、来年の僕は、メチャクチャ忙しいことが決定。うちの夕飯を誰が作るのか心配です。ご尽力くださった関係者ならびに応援してくれたの皆様に深く感謝します 。11/22

・俺屍R追加遺言、ダラダラと書き溜め中 http://togetter.com/li/70228

・まおゆうの橙乃ままれブログ http://m2lade.blogspot.com/

・【僕の新刊本プレゼント】http://twitpic.com/35hltu - ←このページにあなたの仕事の大変さや楽しみを書きこんでくれた方から抽選で20名に12・17発売の『僕の新刊、傷だらけのビーナをプレゼント!』締め切りは12・7の24時。(拡散ヨロ)

・「絶対に一人暮らしなどできない」と言いはっていた長男が、僕の実家(芦屋)なら「下宿してもいい」と妥協したので、京都はちょっと遠いが大阪の大学はあらかた通学圏内に入り、選択肢がかなり増えた。

・今日は知人の結婚式。久しぶりにひげをそったら血だらけになり、礼服を引っ張り出したら薄っすらとカビ、ズボンをはいたらキツイ、白いネクタイが見つからない、ご祝儀袋の買い置きが切れてる……。さて、僕はあと5時間ほどのうちにちゃんと準備ができるのだろうか。

 考えてみればここ十年で礼服を含めてスーツっぽいものを着たのはせいぜい3回。そのうちの2回は、父親の通夜と葬式だ。あ、黒い革靴もなさそうだ。が、それは長男か次男にから借りる

 さて、そろそろ出かける準備。結婚式の会場でひそかに遺言の続きを考えよう。

 うわっ、ネクタイの結び方、忘れてる!

 結婚式から帰宅。同じテーブルに芝村がいるのは予想の範囲だったが、鈴木銀一郎さん森本晃司さん新城カズマさんがいて、隣りのテーブルを見れば押井守さん……。僕を含めてネクタイが似合わない人種ばかりwなかなか濃い披露宴だった。

・@Masshy 雅代、見っけ! 元気?

 そっちもフォローしてくれないとDMは送れないみたいだ。僕も会いたいしNYは一度いってみたい。でも南北の移動は平気なんだが東西の移動はヘロヘロになるんだよ。ハワイに行って太陽を浴びずに帰国するくらい(笑)。
 今年の春先に「ゲームデザイン脳」という本を出した。雅代ちゃんと僕の秘め事もちょっと書いた。意外と受けてる(笑)。ここにアップしておくので暇なとき読んでみて http://www.alfasystem.net/a_m/archives/274.html

・「魚の煮汁」だけが商品として流通しているということを昨日届けられた食材で知った。で、僕は添付されていたレシピー通りに「魚の煮汁」でイカを煮た。けっこう美味しかったのだが、その「魚の煮汁」を出した魚は、たぶん金目鯛で、きっとイカよりも美味いのだろうと想像すると少し寂しい。お腹減った。

【俺屍Rサブタイトル】俺屍をリメイクするとし「たら」、タイトルのあとに旧作と区別できるように何か言葉を追加せねばならない。リメイク、リターンズ、リスタート、リボーン、リロード、リビルト、アゲイン、復活、再生、再誕、再臨、ディレクターズカット、完全版、R、(前なら)真、新……何がいい?
・再臨、再誕、異聞、真説、転生、再び……このあたりが比較的多い感触だね。雰囲気はあるけど「絆」はポジションがわかりにくい。「改」はまんますぎると思うな。
・「俺の屍を越えてゆけ~いつかきっと~」は、どうだろう。
・たぶん頭に浮かんでたのはフルチューンかリチューンだね。なんとなくもうちょっと強い響きの単語だと思ったがそうでもなかった。
・「屍だけにリバイブなんてね」という洒落を思いついたが、「俺屍リバイブ」は案外いいかもしれん

・今一番気になること、そして知りたくないこと。今日は何月何日だろう。

・妙な時間に目が覚めた。最近満腹になると測ったように四時間寝てしまう。寒くなって冬眠期間に入りつつあるのかもしれない……満腹になるまで食わなければいいだけの話だが、何を食っても美味い……ということはまだ冬眠には早い食欲の秋なのか?あるいは怠惰なだけ。

・「遅い遅い遅い!!」と僕がここに書くと「ひー、それ、もしかして私のこと?」と思う人が僕のTL上にいるかもしれないが、経験からいえば自覚のある人はたいてい大丈夫。

・制作費を安く抑えられるためか、タイアップをとりやすいためか、最近工場のラインがテレビからしばしば流れる。子供は興味深げに眺めているから、たぶんそれなりに評判はいいのだろう。でも検品のときにしか人間が映らないのは味気ないな。

・今年一番の発見は、チーズを使った料理はチーズを納豆で代用しても成立するということ。卵黄と納豆とパスタのあえもの、トーストの上に載せても美味い。だがまだ納豆フォンデューは試してないけど。

・娘が高野和明さんの「幽霊人命救助隊」を読んだ感想は「ゲームにすればいいいのに」だった。自殺した4人の幽霊がM日以内にN人の自殺を食い止めれば天国に行かせてやると神様にもちかけられて現実世界で悪戦苦闘する。状況設定がユニークで涙と笑いと根性と友情のさじ加減が絶妙。確かに面白そうだ。

・「〇〇部増刷します」と担当編集者から連絡があってから半年以上たって、送られてきた印税報告書をみると増刷後数カ月の実売分だけという僕が知らない新しいタイプのトラップが発動。たぶん契約書にはそう書いてあるんだろうな。奥さんに新しい冷蔵庫を買ってあげると約束したのに、どうしよう。

・@takakoshimura こんな人もいるよw RT @SusumuChou 桝田さんのツイート見て「takakoshimura」が「志村貴子さん」だと気付かず「高越村」という村(実在しているのかも疑問)が送っているツイートかと思った。 >「せきよし ゆき」
 @SusumuChou \(-"-)/残念 RT @takakoshimura 高越村…;×; RT @ikdtk4 合併されちゃいました>< http://bit.ly/93Q0Ww

ゲームデザイン脳から抜粋
桝田 省治

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ちょっと個人的な用事でここにアップ

●自分ならどう作るか? ――ネクストキング――

 他人の作ったゲームをプレイしてみて、つまりライバルの商品を使ってみて、
「自分ならこの材料をどう料理するか? 先行商品とどう差別化するか?」
 という観点の発想も、ものになるかどうかはともかく現実には多い。
 この発想方法は、すでに目に見えて触【ルビ:さわ】れるカタチがあるものを土台に改良するのだから完成形をイメージしやすい。他人に説明する際も「***みたいに」で片づくからコンセンサスを得やすい。それに、制作資金を出す側も売り上げの見込みが立てやすい。結果、二匹目のドジョウを狙う企画は比較的採用されやすい。
 反面で既存のカタチに捉われて発想が縮こまる傾向があり、二匹目のドジョウではなく二番煎じに陥りやすい。また先行商品が絶対的に有利、かつ二匹目のドジョウを狙う追随者も多い。よって、この発想方法はお手軽だが、差別化ポイントが明確でなければ成功は難しい。
 僕はゲームデザイナーを名乗りながら、ほとんどゲームで遊ばない。最初に買ったゲームソフトはDQ【ルビ:ドラゴンクエスト】とDQⅡだったが、これは、桃太郎伝説というRPGの戦闘式を作るためにプレイした。ゲームは僕にとって仕事であって趣味であったことはかつて一度もない。
 とはいえ、まったくゲームをしないわけではない。特に仕事仲間から「これはやっておけ」と熱烈に勧められた場合、よほど忙しくないかぎりはプレイしている。
「ときめきメモリアル(以下、ときメモ)」がそうだった。ときメモとは、一九九四年にコナミから発売された恋愛SLG【SLGルビ:シミュレーションゲーム】の大ヒット作であり、以降の同ジャンルのゲームに多大な影響を与えたパイオニアである。
 主人公は高校生男子。各種パラメータを調整しスケジュールを上手く管理すれば数人の個性的な女の子と恋愛できるチャンスがあり、高校生らしい恋愛にまつわるイベントが大量に発生する。プレイした内容により女の子のひとりから卒業式の日に告白を受けるマルチエンディング。だいたいこんな内容だ。
 これは面白かった。仕事を放りだして三日くらい遊びたおした。恋愛SLGが初体験だったせいもあるが、現実の恋愛模様を適当な匙加減で美化したイベントの数々が実に小恥ずかしく、ひとりで遊ぶにはそれがなんとも心地よかった。
 特に恋愛対象となりえる女の子のひとり、特徴のあるしゃべり方をする片桐彩子嬢には、学生時代の甘酸っぱい思い出までがよみがえり、息が詰まり気分が悪くなるほどまさしくときめいた。
「恋愛SLGというのは凄まじい破壊力だ」と感心した僕は、冒頭に書いたように「自分ならこの材料をどう料理するか? 先行商品とどう差別化するか?」と考えはじめた。つまり二匹目のドジョウがいると踏んだわけだ。
 ちなみに僕が片桐彩子に異常に興奮したのは、実はときメモの出来がよかったばかりではなかったことが後に発覚する。衝撃の事実を本節の最後にオマケとして付記しておく。(オチを先に読まないように)
“自分ならどう作るか?”を考えていたちょうどその頃、たまたま中学校の同窓会があった。僕が卒業したのは京都の中学だが、父の仕事の関係で一年と一学期間だけ東京の中学に在籍していた。その中学を卒業していないので同窓会名簿に僕の名前はないが、二十代に勤めていた会社でその頃の同級生と偶然再会したことが同窓会に出席したきっかけだ。
 余談だが、その再会した同級生、中学時代はサルに似ているという印象だったが、大人になりちゃんと化粧をすると思わず振り返るほどの美人に変身していた。実を言えば、サル似の彼女がこれほど変身しているなら、当時すでに美人だった女性はどうなっているのだろう、という下世話な興味も同窓会に参加した理由のひとつだ。
 話が脱線した。同窓会の話に戻る。
 僕は中学一年時に身長が一七〇センチあり(そこで止まった)、注目されやすい転校生であったから、ほとんどの方が僕を覚えていた。加えて卒業アルバムに載っていないスペシャルゲストでもあったので、皆さん気を使ってくれたのだろう、同窓会ではとてもチヤホヤされた。さらに、お酒も進んでくると複数の女性から、それも大半は人妻だ、こんな告白まで聞こえてくる始末。
「実は桝田君のこと、ちょっと好きだったんだ▽【▽:白抜きハートマーク】」みたいな……。
 オイオイとは思ったものの、こっちも適当に酔っているから、「あのときもしも転校しなかったら僕たち付き合ってたかもしれないよね」などと、陽気な人妻たちの戯言に調子を合わせた。複数の女性との“if”を楽しむという意味では、それこそ、ときメモを何度もプレイするような感覚だ。
 だが、その楽しい妄想は、別の同級生の密告によりあえなく笑い話と変わる。
「ないない。だってあのとき、あんた、**君と付き合ってたでしょうが。あんた、好きな人、いったい何人いたのよ。ゲラゲラ」
 まッ、現実なんてそんなもんだ。ステキな女性なら複数の男性にアプローチされるだろうし、すでに付き合っている人がいてもおかしくない。それに気になる異性が同時に複数いることも実際には珍しくもなんともない。いや、それが普通か。
 酔った頭でそう考えたとき、僕は“自分ならどう作るか?”を見つけた。
 自分と同じような男性がゲームの中に数人存在する。一方女性にはすでに恋人がいる場合もある。おまけに複数の男性を同時に好きになるのも、心変わりするのも当たり前。
 プレイヤーは、恋のライバルを押しのけて自分の魅力をアピールし意中の女性のハートを射止める、そんなイメージが浮かんだ。
 ただし、ちょっと生々しすぎてユーモアが足りないかなとも思ったので、実際の企画ではこんな風にオブラートに包んだ。
 変人の王様が「次の王様は女の子に一番もてたヤツにするぞよ」と冒頭で宣言。プレイヤーは王様候補の王子のひとりとして、一癖も二癖もある十二人の女性有権者を相手に、いかに自分が素晴らしい男であるかをアピールする選挙運動を繰り広げる……という馬鹿げた設定だ。
 そして完成したのが“対戦”という、ときメモにはないゲーム性をもつ恋愛SLG「ネクストキング」だ。ゲームデザインや操作性に難があったためか、思ったほどは売れなかったが、企画自体は悪くなかったと思っている。
 さて本節のポイント。二匹目のドジョウを狙うのは悪くないが、その際はわかりやすい独自性を打ち出そう。そうしないとただの二番煎じになる。

☆オマケ
 本文中で話題にした東京の中学に僕が在籍していた頃、九州から転校してきた女の子がいた。彼女は、話題が豊富で頭のいい明るい人だった。
 僕が京都に転校する寸前の夏休み、信州の林間学校でのことだ。当時そのあたりをまだ走っていた蒸気機関車を僕は彼女と土砂降りの雨の中、相合傘で見に行った。
 付き合っていたわけではない。たまたま傘が一本しかなかっただけだ。だが、彼女は間違いなくチャーミングな女性であったし、その林間学校が終わり東京に戻れば僕は引っ越すという状況もあいまって、なんだかときめいたのを覚えている。
 彼女の名前は、川口雅代。
 本名をそのまま芸名にし、ときメモの片桐彩子の声を担当していた。
 なんと、僕は片桐彩子の声の持ち主と、たった一回たまたまだけど、ときメモのイベントにありそうな甘酸っぱくも切ないデートを二十年ほど前にすでに体験していたんだよ。彼女の声で、頭の片隅に残っていた僕の記憶とゲーム内のデートシーンがシンクロしたんだろうね。まさに既視感【ルビ:デジャ・ビュ】というヤツだ。
 ちなみにその後、川口雅代と連絡がついた。彼女もそのときのことを覚えていてくれて嬉しかった。本当にいい思い出だ。