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ザ・ジャグル 汝と共に平和のあらんことを 榊一郎著
桝田 省治

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 軌道エレベーター下に建設された平和の象徴たる「べき」理想都市。
 だが、その「べき」を、ぜんぜん平和的でない手段で人知れず必死に守るロボット部隊のパイロットの話だ。

 ダメなところから書くよ。
「人型のロボットで戦うなんて効率がよくないことは百も承知なので、それをなんとか辻褄を合わせるのがスゲー大変だった」と後書きにあるが、それは読者も知っていることだ。苦労したのも読めばわかる。
 だけど、作者は苦労話を読ませたいわけじゃないし、大半の読者もそんなものを読みたいとは思ってない。
 言いたくなるのもよくわかるが、爽快感とかドキドキとか涙とかゲラゲラ、そういうものを売る商売なんだから、夢のない話は言わないほうがカッコイイと思う。

 いや、まあ、僕もつい書いちゃうんだけど、でも、言わない方がカッコイイよ。

 全三話のうち最初の一話は設定説明が多くて、文字を追うドライブ感がイマイチ乗り切れなかった。
 それに映像なら数秒で伝えられる情報を文字で表すと数ページになることがしばしば。ちょっとだれた。
「いいから早く戦えよ!!」とヒーロー物のテレビドラマを見ているガキのような不満がわいた。

 残りの二話は、部隊の面々のキャラも立ってきて、アクションもキレがいい。ちゃんと面白かった。
 たぶん、続きも読むと思う。

ファミ通の新年会に初めて行った
桝田 省治

 毎年招待状をもらうが一度も出たことがなかったのだけど、アルファの佐々木君から久しぶりに会おうと連絡があったので品川まで出かけた。

「Twitterやってないで、うちの仕事早くやってください」と数人から怒られた。だから行きたくなかったんだよ……。

 それと、広井さんに久しぶりに会ったらいきなり抱きしめられた。
 氏のことは兄貴のように大好きだが、正直言うと男に抱きしめられるのは僕はあまり好きじゃないんだ。
 まあ、一年に一回くらいなら我慢するけどね。

 桜井君に会えたらお礼を言うつもりだったのだけど、見つけられなかった。

ジョン&マリー ゲームデザイン脳
桝田 省治

 朝から水玉さんのイラストが数点送られてきて嬉しい。

 といわけで、【ジョン&マリー ふたりは賞金稼ぎ】(ハヤカワJA文庫 2月末発売)の話。
 大き目のRPGのシナリオを依頼されて書いていたとき、世界を救うとか魔王を倒すとかじゃなく、もっと身近で個人的な理由で冒険に出るほうがリアルだなとふと思った。

 で、誰にでもわかる一番身近な目的は金だ。
 ただし、ただ金儲けというのも夢がない。
 貧乏な若い男女が結婚資金を貯めるために冒険に出る。そういう設定なら、なんだか微笑ましいし応援したくもなるかな。そんな風に考えた。

 賞金がかかっている事件に首を突っ込んだり、うわさを聞いてお宝を探したり、水戸黄門みたいに町から町に旅していく。システムを固定してイベントだけ差し替えてケータイアプリで三カ月おきに配信。
 五話か六話貯まったら、PSPかDSあたりに二話追加して移植。
 そんな感じでどうだろう……てなことを考えていたのだけど、目先の仕事に忙殺されてそれ以上は深く考えてなかった。

 去年1月に「透明の猫と年上の妹」夏に「傷だらけのビーナ」(両方エンターブレイン、発売日未定)を書いて、どっちも登場人物の半分ほどが死ぬような話なので、ちょっと疲れた。で、ふと思い出したのが先の「貧乏な若い男女が結婚資金を貯めるために冒険」だ。
 そのとき水玉さんのポップなキャラが頭に浮かんだ。
 で、まともな企画書すら1行も書いていないのに水玉さんに「描いてもらえませんか?」とメールしてみたら、描いてくれた。おまけに出版社まで紹介してもらった。企画書を書いたのはそのあとだ(笑)。こんな調子で決まったので、僕は終始ノリノリで仕事をさせてもらった。
 その雰囲気は、読んでもらえれば伝わると思う。さらには「どうせなら小川一水君に帯の推薦文を頼もう」と、なかば冗談で言ったら、これもすんなり引き受けてもらえた。
 こんな楽しい仕事ばかりならストレスが溜まらないだろうな。……とか言ってたら校正用のゲラが届いた。さて、やるか。


 校正中――
 この歳になると文庫本の校正は辛い。ルビの濁点と半濁点が区別がつかない。濁点と半濁点の違いを強調した「ルビ専」とかいう書体を誰か考案してほしい。
 いつだったか「青野さんや永井さんの原稿は拡大してあげてね」と確か高山みなみに助言された。
「みなみは優しいエエ娘(こ)やのお。うちの息子の嫁に」と惚れたね。
 でもそんな彼女もそろそろ老眼仲間(笑)。


 校正終了――
「ジョンとマリー」には新しい部品はひとつもない。ただし部品の新しい組み合わせのアイデアが2個くらいある。たった2個の組み合わせの新しさだけでも、けっこう面白い娯楽商品は作れる。
 というあたりの方法論を書いたのが、実は3月末に出る【ゲームデザイン脳 桝田省治の発想とワザ】(技術評論社刊)だ。
 ふ~、次はそっちの校正が待っている。
 自分で書いた文章って、何度も読み直しているとだんだん面白いのかどうか、わからなくなってくるからイヤだ。
 いや、まあ、面倒くさいだけなんだけどな。

 そのジャケットや挿絵を担当しているのが帝国少年さん。
 彼のサイトhttp://tksn.web.infoseek.co.jp/の作品を見ていて「なんかこの絵、昔一度見たことがあるよなあ」と思ったら、八年くらい前に広井さんから二枚ほど都市の緻密な設定画を見せられて「この世界観でゲームにできんか?」みたいな話があって、確か次元を超えるバイクを駆る窃盗団を主役にして、とかなんとか、そんな感じの企画書を書いたことがあったっけな……と思い出した。
 結局その企画はボツったんだけど、「ああ、あのときの設定画、この男だったんかい。へ~、へ~、へ~」と妙な縁を感じた。

 先週、ジャケットのイラストのラフが送られてきた。
 うら若い乙女の首が取れてたよ。いや、まあ、そういうのを頼んだのは僕なんだけど、それでも笑った。
 ちなみにゲームデザインの本なのに帝国少年さんの書き下ろしポスターが付録。
 なんだか制作費のかけ方を間違えてると思うのだけど、たぶんいい感じに間違えてるから、帝国少年さんのファンの方は、ポスターのオマケにゲームデザインの本が付いてきた、でいいよ。
「ゲームデザイン脳」の帯の推薦文をスマブラの桜井くんが書いてくれることになった。
 だけど、僕の予想では彼はきっとこう書く。「帝国少年オリジナルポスター!!」。
 桜井くんも帝国少年さんのイラストが好きらしいんだ(笑)。

Twitter はじめました
桝田 省治

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ShojiMasuda
近頃あちこちから勧められるので試しに始めてみる。とりあえず俺屍2の企画内容を整理するメモ書きにでも使うことにする。
ちなみに上の写真がアイコン。

サラマンダー殲滅 梶尾真治著
桝田 省治

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 夫と子供を殺された普通の主婦が、数々の辛苦を乗り越えて、宇宙規模のテロ組織に復讐する話だ。

 これは面白かった!!
 どんどん使い捨てられる斬新なアイデア、次々に目の前に立ち上がる見たこともない映像。
 これをハリウッド映画でやれば1秒で何億もかかるのだろうけど「書くだけなら紙と鉛筆代だけだぜ、グハハハ」と、なかば開き直った大笑いが聞こえんばかりの大盤振る舞い。
 ここまで徹底的にやれば、小賢しい伏線など不要。
「それ、都合がよすぎ」というツッコミをさせる余裕を与えない怒涛の900ページだ。
 展開はとにかくダイナミックだ。だが、さすがは「黄泉がえり」の梶真。殺伐とした設定なのに登場キャラの多くが優しい人だ。
 こういうトーンは、大好きだ。

 読み終えてふと思った余計なお世話。というか自身の経験と照らし合わせてみてといったほうが正確かもしれないが……、
 これを書いたときの作者は、何があったかは知らないし想像したくもないけれど、実生活がよほど退屈で、頭の中だけでも銀河の彼方に行ってしまいたいほど、現実逃避したい負のエネルギーであふれかえってたんだろうな。
 そうでもなきゃ、こんなもん書けないと、老婆心ながら思う。


 昨日は名古屋まで行って桜瀬琥姫さんと、生姜汁を飲みながらイラストの打ち合わせをしてきた。
「ジョン&マリー」の水玉さん、「ケームデザイン脳」の帝国少年さん、それに「透明の猫と年上の妹」の桜瀬さん。
 僕の勝手な思い込みかもしれないが、お三方ともなんだか打ち合わせが楽しげだった。
 スタッフのノリがいいときは、僕が想定した以上に面白いものができる可能性が高い。楽しみだな。


 帰宅したら、「ザ・ジャグル 汝と共に平和のあらんことをⅠ 榊一郎著」がハヤカワから届いてた。
 どうやら僕と担当編集が同じらしい。