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赤い虎と少年たちの戦いの話
桝田 省治

 娘は、今年の初めくらいまでは、将来はナンタラいう、世界で一番醜く臭い猪(絶滅危惧種らしい)の飼育係になりたいと言っていたが、今は新薬の開発を手がけたいらしい。
 いくつかアイデアがあるのだと真顔で言う。
 だが、同時に書か「ねばならない」物語もあるので、悩んでいるそうだ。
 どんな話だと訊くと「赤い虎と少年たちの戦い」の話らしい。
 僕は、いくつかディテールも聞いたが、長くなるので粗筋だけ紹介する。

 赤い虎は、虎の王で、人間に森を奪われ食べ物がなくなり、しかたなく他の虎たちを率いて人間の村をおそっている。
 人間は鉄砲を携え、村を守ることに手一杯。
 神出鬼没の赤い虎を捕らえることも追うことも出来ない。
 赤い虎に尊敬する父を殺された少年が赤い虎を追う。
 その旅の途中で、同じ境遇の仲間が増える。
 苦労の末、少年たちは赤い虎の本拠地を見つける。
 その山を守っているのは、赤い虎の七匹の子供。
 いずれも賢くて強い。
 少年たちと赤い虎の子供たちの死闘が繰りひろげられる。
 互いに仲間を失う。
 少年は、やっと山の頂上にいる赤い虎と対峙する。
 子供をすべて奪われた赤い虎と、親と友人をすべて奪われた少年の対決だ。

「で、どっちが勝つんだ?」僕が訊くと、
「いくつかアイデアがある。大人になるまでに考える」と娘はまたしても真顔で応えた。

 子供の壮大な空想と比較すると、僕の小説なんて実にちっぽけだ、とつくづく思う。

 追伸:
 リンダのキャンペーンに応募してくださった皆様、ありがとう。
 抽選に当たった方、とりあえずおめでとう。
 いらないものでも、恥ずかしいからオークションに出したりしないように、よろしく(笑)