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Twitterから抜粋、最近分
桝田 省治

・俺屍アンケートのお礼 http://www.jp.playstation.com/scej/masuda/ やっぱ素人に原稿もなしで一発録りは無謀だったね。緊張して瞬きの回数が異様に多い僕の恥ずかしい動画を見たい人はどうぞ。
 ちなみに、最後の「俺の屍を越えてゆけをよろしく」のとこで、よりによってタイトルを噛んじゃって、さすがにタイトルはまずいだろうと、そこだけ録り直したw

・うちには食料やシャンプーなどの備蓄庫になっている通路とも納戸とも言えない半端なスペースがある。昨夜の土砂降りのとき、家じゅうの窓を閉めたつもりだったが、どうやらそこの窓だけ確認を怠っていたらしい。ざっと見たところ被害総額は3000円。

・娘が宿題の詩を見せてくれた。飛行機が海に潜ってみたいと考えたなら……そんなファンタジックな内容でなかなかユニーク。だが、もっと面白かったのは詩に添えられたイラスト。飛行機の望みを実現するために娘なりに考えたラフスケッチの数々だ。子供の想像力にはかなわないね。

・誰かうちの娘のために、というか正確には僕のためだが、「虫の名前だけしりとり」とか「魚の名前だけしりとり」とかいうソフトを作ってくれ。もうぜんぜん勝てない。

・9/12 今日から秋山は「救世主」か「スーパースター」に改名すべき!

・9/11 今日のゲームに関しては、藤川で負けたならしょうがないとは言えないね。はあ

・うちの近辺では、粗大ゴミの回収車のアナウンスと徘徊老人の情報提供を求める警察の放送がたまに重なって聞こえる。そのたびに頭の中で、荷台に痴呆症の老人を満載した軽トラがいずこともなく走り去っていく。

・俺屍のアンケートに関するツイートを眺めていると「出して」とか「入れて」という語句がやたらと目につき、ちょっとだけHな気分になった……ウソだけど

・PSNで始まった俺屍のアンケート調査に関しては、もちろん知らないわけじゃないけど、結果が出るまでは立場上ノーコメントてーことにさせてください。

・9/10 昨夜の活躍を1日で帳消しにする男、福原……

・9/10 中日巨人の自力優勝が消滅。現在自力優勝出来るのは阪神のみ。ということは、勝手に自滅して優勝の可能性を消滅させることができるのも阪神だけだ。あぁ、それはお家芸だ。

・なんだ、こりゃ。最高だな、涙でてきた RT 梅佳代の「視点・論点」http://bit.ly/aPFO4U

・全ての道は福井に通じるという諺どおりだ RT http://twitpic.com/1n4io2

・小池さんが一番好きです。 http://orangestar.littlestar.jp/

・救急病院が近所にあるのは心強いが、早朝救急車のけたたましいサイレンで目が覚めるのは、何度体験しても慣れないな。

・9月になった。今日から子供の昼飯をどうしようかと悩まなくてすむ……と思ったが、今日は始業式だけで昼には帰ってくるらしい。夏の昼に中華鍋で4人分のチャーハンなんぞ作ったらヘロヘロだよ。

・たぶん年末、「透明の猫と年上の妹」「傷だらけのビーナ」と連続刊行の予定。出版社は、「ハルカ」と同じでエンターブレインです。

シャングリ・ラ 池上永一著
桝田 省治

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 亜熱帯の森に覆われた東京、そびえたつ巨大空中都市。
 二酸化炭素削減のため、地球規模で炭素税を導入。
 既にアニメ化されてるなんて話は全く知らないまま、このあたりの大手ゼネコンが描きそうな近未来設定に興味を持って読みはじめた。

 が、人の背より大きなブーメランで戦車を真っ二つにする、セーラー服を着た美少女が登場したあたりで「アレアレ、もしや、この小説ってそっち系なの?」と首をかしげはじめた。

 が、中盤からは、次から次に登場する「刃物をもった○チガイ」の博覧会から妖怪大戦争へ様変わり。
 設定もストーリーもどうでもよくなり、下巻は笑い通しだった。
 期待は100%裏切られたが、これはこれで面白かった。

Twitterから抜粋、最近分
桝田 省治

・あと2時間ほどしたら小5の娘を千葉まで送っていく。そこから房総半島の先のほうまで彼女は、人生初のひとり旅に出る。……といっても夏休みになってから毎日のように都心の塾までひとりで通っているので誰も心配していない。が、「人生初のひとり旅と呼んだほうが気分が盛り上がる」と娘の弁

・よりによってこんな男と結婚したくらいだから、僕の妻は十分すぎるほど頭がおかしい

・『メタルマックス』ファンにお知らせ! 9月30日(木)阿佐ヶ谷ロフトAにて、メタルマックス・トークライブをやります! 特別ゲストの制作スタッフ陣が、開発秘話など語ってくださいます。詳しくは9月2日売りの『週刊ファミ通』誌上にて!

・娘を千葉まで送っていき電車に乗せて40分ほど過ぎたころに「どうしよう、みんな木更津でおりちゃったよ」と娘からメール。目的地は木更津より先、何度もおりる駅は確認したのに……。「ゲームが面白くなるのは大半の人がおりたあとだ」と返信

・老婆心ながら忠告するが、ドラム缶を押す体験をしたいがためだけに、メタルマックスをプレイするのはやめたほうがいい

・俺屍のジャケットについての誤解。たかがゲームのジャケットになっただけなのに、子供のあの子が「おまえ、桝田の息子?」と何十回も聞かれたなら、とても気の毒に思うね

・妻とスーパーマーケットに食品の買い出しに行くのが好きだ。何が面白いって、僕なら絶対に買わない新製品を躊躇なくかごに放り込むから。ちなみに僕が買わない理由と彼女が買う理由は、まったく同じ。「すぐに市場から消えてしまいそうだから」だ

・そういえば今年はスイカをまだ一切れも口にしていない。でも梨はもう食べた……。うわッ、猛烈にヘンな感じ。今さらスイカには戻れない身体になったかも

・「アマガエルそっくりの」を美人の修飾語に使って、編集者に「読者に伝わりません」と赤を入れられるくらいアマガエルが好きだ

・俺屍の印税報告書が届く。いつもよりちょっと多かったのは、「続編の企画をSCEに出すよ」とツイッターで年始につぶいた影響があるのかもしれない。ありがたいね。……というわけで、久しぶりにけっこう多くの人が気にかけてくれているであろう「俺屍2」の話。

・【俺屍2】結論からいえば企画は流れていない。この不景気なご時世ゆえ楽観はぜんぜんできないものの、SCE社内の俺屍親派な方々が、具体的なことは書けないが、いわゆる「社内調整」を粘り強く続けてくれている。ホントありがたいよ。いいお知らせがそのうちできればと思います

・長男の話では「勉強禁止」という張り紙がある喫茶店だかハンバーガー屋が代々木にはあるそうだ。予備校が多いせいかな

・面白さのメインをシナリオに置いているゲームは、いずれ終わりが来るから、システムで過程が無限に生成されるタイプや他者とのコミュニケーションに依存しているタイプのゲームに比べれば、重大な問題はおきにくいと思う

・次男が志望する高校の体験入学に引率。数年前まで女子高で次男の志望する学科に至っては男子はクラスに1人という学年もある。「それって環境としてどーなんですか?」と先生に訊ねたら「ときどきテラスでため息をついている姿を見かけるが、それ以外はとくに大丈夫ですよ」と笑顔でお答えいただいた

・8/28マートン様大暴れ

・8/29金本、城島の連続アーチ

Twitterから抜粋、最近分
桝田 省治

●7/30うわッ、マエケンが打たれた……。だからあれほど脇谷とエドガーと坂本と松本と小笠原とラミレスと長野と高橋と亀井と阿部と谷には注意しろと

●いただいた北京ダッグをあらかた食べ終えた後、残った頭部を小5の娘が細かく解体し、「数が足りないけどこれが頸椎、この糸みたいなのが延髄」と高3と中3の息子たちに解説していた。個人的な観測では、女の子のほうが解剖が好きだと思う

●毎週長男と欠かさず見ている程度に「けいおん」が好きだが……いまだキャラの名前がりっちゃんしか覚えられない

●僕がひいきにしている選手は、チームの足を引っ張りしばしばため息をつかせいらつかせる。じゃあ、わざわざ見なけりゃいいのだが、ごくたまに別人のように活躍するのでやめられない。こういうランダムに当たりが出るものは、パチスロもそうだが中毒になりやすい……ということも職業柄よく知っているさ

●虫オンナの企画:残念がってくれる人が多いのは嬉しいが、僕が面白がっている限りは、僕は「面白い企画がありますぜ、ダンナ」と会う人ごとに言い続ける。経験から言えば、10年言い続ければたいてい何とかなるもんだ。僕にとっては企画ってそういうもんで、そういうネタが100あれば仕事は回るよ

●「独立したら儲かるって言ったの、桝田さんでしたよねえ。ぜんぜんじゃないっスか」と顔を合わせるたびに野島君に愚痴られる

●「虫オンナ」の企画、再掲載しておきますので、「うちの担当、この暑さで脳が茹ってる」と思う作家さま、以下のURLをご紹介くだされば幸いです。よろしく。 http://p.tl/xcJH

●イスラエルの国境沿いで隣国からも見えるような規模の花火大会をPLにぜひ開催してほしい。爆撃と間違えられるか、平和の祭典ととられるかはわからないが、世界中の国が放映してくれるだろうから、PLの名前は一晩で世界中に知れ渡ること間違いなし

●よく腹を下す次男は、通学路上にあるほとんどの駅のトイレに関して、かなり詳しい論評ができる

●ふたつほどアドバイスできることがあるとすれば、「ゲームデザイン脳」の紙質は、トイレットペーパーとしてはまったく不向きだということ。それに、トイレに駆け込んでからこの事実に気づいても既に手遅れだということか

●千葉TVには、2機種のヘリの乗り心地を比較するという番組があるらしい。いったい誰が観るのか?企画意図は何なのか?どんな経緯で企画が通ったのか?スポンサーはついたのか?興味は尽きないが観たいとはぜんぜん思わない

●賛成多数で通った企画の大半は、その時点ですで古い。もちろん古いから悪いわけじゃないが、陳腐な場合が少なからずある。といって、陳腐な面白さにも需要があるから始末に悪い

●夏らしい服装の美人とすれ違い、振り向いたら背中に「もう秋ですね」と書かれた小さな紙がセロテープで貼り付けられている……そんな感じで今日は少し涼しい

●「ジョン&マリー ふたりは賞金稼ぎは、いかがでしょう」とアマゾンから初めて自分の本を勧められた。妙な気分だ

●「透明の猫と年上の妹」子供は夢中になるだろうし、大人が読んでもかなり面白いと思う。が、親が子供に薦めたくなる内容かどうかは、自己責任で判断してもらうしかない。悪書じゃないが毒書かもw

●次男と徒歩20分の墓参り。草をとり、墓石の汚れを拭い、花と線香を供えて帰宅。帰宅して麦茶を飲んだところで手を合わせるのを忘れたことに気づく。次男いわく「そのかわり水をたくさんかけておいたから」

●桝田家の墓石は、ほぼ正方形の平べったい大きなピンク色の石の真ん中に五重の同心円が刻まれている、ちょっと変わったデザインだ。完成したときは、なかなかいい感じだと思っていたが、同心円の細かい溝に汚れが溜まりやすくかつ掃除がしにくいことに翌年気づいた。……あれは、失敗だった

●今日と明日、長男は大学受験の模試。第一志望にB判定以上がつかない場合、志望大学を変えるのだそうだ。ちなみにC判定は合格確率50%。「現役ならそんなもんだろ。慎重すぎないか?」と言うと「ゲームじゃないんだから」と18歳の少年に諭された

●模試の結果がB判定以上でなかった場合、志望校を変更すると言う長男に「結論を出すには早くないか?」としつこく聞くと「B判定が出る可能性がないなら模試自体受けていない」とまた諭された

●「センター試験までまだ4カ月もあるぞ」と、長男に言うと「二次試験まで半年だよ」と苦笑いされた。そういうものなのか……

●30%程度の可能性に迷わず賭ける無謀な次男のほうが、30%程度の不確定要素にすら躊躇する慎重な長男より明らかにモテる。10代の女の子の男を見る目ってそういうもんだ

●今日も模試を受けに行く長男に朝からカツ丼を作って笑わせてやろうかと思い冷蔵庫を覗いたが、卵と鶏肉くらいしかなかったので親子丼にしようと思ったが、朝から親子丼というのもカツ丼を作って笑わせようとして材料がなかったのがばれて笑われそうで嫌だ。……この笑いは、うちでは負けなんだよ

●2日目の模試を終え夕方帰宅した長男は「物理の得点精度が低い」と言ってた。挙句に「どうすれば半年でその穴を埋められるか考えてたら英語の長文読解でありえないミスをした。ワハハハ」。それから8時間眠り今さっき起きてきた。……とりあえず放っておく

●長男の人生なんだし大学くらい自分で決めればいい話だ。たとえそれが「自宅から通えて、通学定期でアキバに寄れる」という基準で選ばれてるとしてもだ。親の僕が「女の子がいっぱいいて就職に困らず勉強しないで入れる」を基準に大学を選んだのだから、まあ、僕よりはそれなりに勉強している分だけ少しはマシだw

●「透明の猫と年上の妹」。ページが余るので後書きを入れてくれと編集に頼まれた。いつもなら「ここが見どころ」とかずうずうしく自分で書いてしまうのだが、どうも本作に関しては勝手が違って上手く書けない。どなたか僕の代わりに解説を書いてあげようという方いない? 原稿料以外にお歳暮もあげるよ

●8/17『ゲームデザイン脳 桝田省治の発想とワザ Lite iPhone版』 (無料)が本日配信されたようだ。にしてもこの「Lite」ってどういう意味なんだろう?「ちょっとだけよ~ン」とか「チラ見せ」とか、そういう意味かな http://bit.ly/bTW4wc

●つまらない打ち合わせの際は、目の前の相手が「生き別れた妹だったら」「両親を殺した時効寸前の犯人だったら」「突然僕にプロポーズしたら」どうしよう……などと考えて楽しい時間を過ごす

●「24時消灯」の1文に「ありえん」とせっかく取り寄せた大学の案内を放りだす、深夜アニメが生きがいの長男……

「虫オンナ」企画 再掲載
桝田 省治

 この企画を面白がった友人の作家たちが数社紹介してくれたのだが、「ホラーは売れん」「ラノベじゃ無理」「うちの読者に合わん」「部数が読めん」など、さもありなんな理由で断られましたとさ(笑)。
 というわけで、再掲載しておくので「ウチなら出せる」という怖いもの知らずな編集者さま、いらっしゃいましたらいつでもお声をかけてください。
 ただし、僕は「これ、ホラーじゃないよ」「イラスト付きの軽い娯楽小説(ラノベ)を中高生しか読まないと勝手に決めるな」「大ヒットするとは思わんが読者はそこそこいる」と思っているので、そこのとこよろしく。


●虫オンナ

○趣旨:
 ようするに「鶴の恩返し」あるいは「人魚姫」など、人外の女が人間の男に恋し、人の姿になって現れその男につくす……それの「虫」版。
 本作のポイントは、男のもとを訪れる女が、鶴とか人魚とかイメージが美しい生き物ではなく、生態が人間とはかけ離れた「虫」であること。
 見どころは、3つ。
1.虫オンナ本人は、惚れた男のためによかれと思ってやることがことごとく“虫の価値観”“虫のルール”ゆえにずれる。
 場合によっては、男の生命すらも危機に陥れる。
 その哀しくもおかしく、ときにグロテスクだが、虫オンナ本人は必死な様。
2.虫オンナは、元が「虫」なので人間にはないさまざまな能力を備えている。
 この超能力を虫オンナがどの場面でどんな風に使って、男を助けて状況を逆転するか。
3.虫オンナに振り回されつつも、虫オンナの思いを知り、徐々にその生態にも慣れ、果ては虫オンナとの奇妙な生活を受け入れる男の変化。ようするに壊れていく様。

○主人公と舞台:
 現代。主人公は、うだつの上がらない高校生男子。肉体も頭脳も容姿も人並み以下。性格は消極的。
 以前の学校でいじめに合い、県外に転校。現在はアパートにひとり暮らし。
 唯一の長所は「虫も殺さない」優しさ。その唯一の取り柄が次々に虫オンナを呼び寄せていく。

○構成案:
【n】の表記が10~12ページ、1節分

●序章
【1】
 現在の状況。主人公(純也。18歳男、高3)、夏休み後半、一人暮らし。
 純也と虫オンナの奇妙な共生関係。
 純也は、虫オンナに殺す男を指示する役。

 子供のころに肥え溜めに落とされ、ひとりで這い上がれず、発見されるまで半日つかっていた記憶。
 それ以降、「うんこ」と呼ばれいじめを受け、現在に至る。
 唯一の味方は、幼馴染の女の子H。登校拒否気味の純也を毎朝迎えに来ていた。
 だが、そのHとも中学入学後は徐々に疎遠に。
 純也自身、臭いが消えないと今も思っている。

●1章
【2】
 蟷螂(かまきり)オンナ、キリコとの最初の出会い。
 回想3年前、中3夏休み前。
 純也は、不良グループからいじめられ、恐喝される。
 不良から逃げようとするが、逃げている最中に蟷螂を踏みそうになり転倒。
 不良たちに追いつかれ、殴られ蹴られした挙句に塾の夏期講習代を財布ごと奪われる。
 純也の身を案じた幼馴染Hに事情を訊ねられるが、純也は拒否する。
「俺を慰めたいならやらせろ」と乱暴に迫ると、「弱虫!」とHに平手打ちを食らう。
 自分が情けなくなった純也は、自殺を考えて校舎の非常階段を上っていく。
 その途中で緑色のワンピースを着た美しく可憐な幼女キリコに出会う。
【3】
「死んだってどこにも逃げられないよ。私なら別のところに連れってあげられる」
「どうやって?」と問う純也に
「お嫁さんにしてよ」とキリコが唐突にプロポーズする。
 自暴自棄になっていた純也は苦笑しつつも承諾。
 数日後、キリコは、不良にとられた財布を純也に「拾ったよ」と返す。
 お礼にキリコのリクエストでアイスクリームをおごる。キリコは、初めて食べたと大喜び。
 純也は、自分を恐喝していた少年たちが次々に惨殺されていることを知る。
 異常な死に方だ。首は落とされ手足がもがれ内臓が食われている。しかも密室。凶器も不明。
 捜査中の刑事Aに事情聴取を受けた際、純也がキリコを「妹だ」と言うと、キリコが「お嫁さん」と訂正する。
【4】
 純也は、塾の夏期講習に行かず、キリコとの奇妙なデートを繰り返す。
 キリコは、最初はほとんど表情がなかったが、次第に感情が豊かになる。
 また、見た目は幼女のままだが、純也が読んでいたラノベや漫画で言葉を覚え、話の内容も大人びてくる。
 純也は、キリコの純真無垢な心と時折見せる艶めかしさ、自分にはない野蛮で大胆な行動力(純也の唇を奪う、腕にかみつくなど)に次第に惹かれていく。
 だが、相手は幼女なので、気持ちを告げることはない。
 夏期講習にさぼっていることをなじられ、幼馴染Hとは、ますます疎遠になる。
【5】
 夏の終わり、キリコは純也に「しばらく会えない」と告げ、次に会う場所と日時を伝える。
 そして、唐突に「目印に」と自分の前腕を傷つけて純也のイニシャルJを刻む。
 殺人現場近くで緑色のワンピースを着た幼女が何度か見かけられた、との噂を幼馴染Hから聞く。
 注意を受けるが、純也は聞く耳をもたない。
 純也は、幼女キリコに対する愛情を自覚する。
【6】
 不良少年たちは、幼女の情報を得ようと純也を拉致し暴行する。
 純也は、耐えきれずキリコと会う場所を白状する。ただし、日時は1日前。キリコはいるはずがない。
 不良少年たちは、財布を取りあげたのち、純也を解放する。
 純也は、キリコのことを思い、急に不安になる。いてもたってもいられなくなり、ナイフやバットをもって、キリコと約束した場所を訪れる。
【7】
 そこには不良少年の惨殺死体が転がり、その中ほどにキリコが立っている。
 だが、キリコと思われた物は、幼女の抜け殻で中身がない。
 純也がキリコの名を呼ぶと、頭上からよわよわしく純也の名が呼ぶ声が聞こえる。
 暗闇を見上げると、純也よりやや年上に見える裸身の少女が逆さまにぶら下がっていて目が合う。
 よく見ると少女の身体は、半身がグシャグシャで融けたような状態だ。
 少女の腕がだらりと垂れる。その腕にはJのイニシャルが刻まれている。
 手から純也の財布が落ちてくる。
「拾ったよ」と少女。
「何があった?」と訊ねると、少女は「身体が固まる前に、強引に脱ぎ捨てた」と応えたのち、「大きくなって純也のお嫁さんになって純也を食べたかった」と続ける。
「抱いてよ、純ちゃん」
 事切れた少女が純也の上に落下。
 純也は、抱きとめようとするが、落下の途中で少女が消失。
 純也の手のひらに脱皮しそこねた半身のない白い蟷螂の死体が残る。
 純也は、自分の弱さ、判断の遅さがキリコを殺したと嘆く。
 その後、純也は警察の事情聴取を受ける。
 刑事Aに「純也には妹がいない」件を追求されると、純也は「もういないんだ」とだけ応えて口をつぐむ。
 結局、犯人は見つからない。

●2章
【8】
「そりゃあ、犯人は既に死んでるんだから、どこを探してもいないよね。だいたい人間でもないし!」
 再び現在。死んだはずの少女キリコが純也の前で、「あの頃の純ちゃんは可愛かったわ」とクスクス笑っている。
「そういえば、なんで俺の前に現れたんだ? いつかつぶさないように避けて転んだから?」
「違うよ、純ちゃんは私の獲物。前から目をつけてたんだから、取られてたまるかって」
「前から? じゃあ、俺を食うつもりで近づいたのかよ?」
「最初に、お嫁さんにしてって、ちゃんと断ったはずよ」てなチグハグな会話。
 その後、「肥え溜めに落ちたとき、暇つぶしにたまたまそばにいた蟷螂にキリコと名をつけた」「そういえば、その後も蟷螂をよく見かけた」てな因縁話を入れる。
 今年のターゲットは、「このあたりの地上げを生業にする新興の暴力団」と、純也が発表する。
「それっておいしいの?」とキリコが質問する。

●3章
【9】
 蟷螂(かまきり)オンナ、キリコと出会った翌年、高1の夏。
 純也は、別の高校に進学した幼馴染Hが大学生と思しき男とラブホテルに入ろうとするところを目撃する。
 目が合う。Hは純也をじっと見つめる。だが、大学生に声をかけられてホテルに入る。
 それを見送った純也に「あの人の匂いは、止めてほしいって言ってたよ」と声をかけたのは、死んだはずのキリコに生き写しの幼女だ。
 思わず「キリコ?」と声をかけると、幼女はキョトンとしている。が、しばらくすると、
「あなたが純ちゃん?」と逆に訊ねる。
 幼女は、去年死んだ蟷螂オンナの姉妹の卵から今年産まれたらしい。
 幼女は、去年の蟷螂オンナの記憶も持っている。
「強い感情は、人間の言葉より明解に、匂いや味で同種族に伝わっていく」と説明する。
 そして、「今は私がキリコ」と名乗り、純也にぶら下がるように腕をからませる。その腕には純也のイニシャルJを刻んだ傷跡も残っている。
【10】
 幼女キリコは、再び純也にプロポーズする。
 純也は、むやみに人を殺してはいけないなど、人の世界で生きていくためのルールを守ることを条件に承諾する。
 キリコは、このルールに納得がいかない風だが、純也が嫌なことはしないと約束する。
「そんなに俺のこと好きなの?」
「うん。食べちゃいたいくらい」
「俺を食うの?」
「弱虫は嫌い。いつか純ちゃんが強いオスになったら。そのときお嫁さんにしてもらう」
 純也は、自分がキリコに食われる様を想像し、口元が緩む。
【11】
 はた目から見れば異様だが、ふたりにとっては楽しい日々がしばらく続く。(夜な夜な野良猫狩りなど)
 ときどき何者かの視線を感じることがある。
 キリコは、純也との約束を忘れたかのように凶暴な一面を時おり見せる。
 だが、純也は、攻撃的な性格のときのキリコにも惹かれていく。
 またしても惨たらしい殺人事件が起きる。殺されたのは、純也が思わず「寄生虫」と評したホームレス(?)たちだ。
【12】
 純也はキリコを疑うが、キリコは自分ではないときっぱり否定する。
 そこにキリコと瓜二つのもうひとりの幼女が姿を見せる。
 それは、キリコと同じ卵から産まれた姉妹で、ときどきキリコのふりをして純也と遊んでいた。
 時おり凶暴な様を見せていたのは、この姉妹だったと判明する。
 純也は、姉妹の凶行を止めようとするが、姉妹は、「人間の道徳を押しつけるな」と虫の論理で反論。
 さらには、キリコの名前も、純也も自分のものだと主張。なぜなら、自分のほうが強いからだと言う。
 言われてみれば、人間を食ったせいか、こちらのほうが健康そうで肉付きもいい。
 キリコとその姉妹は、数日後に最後の脱皮が迫っている。脱皮が終わった直後、殺し合いをして、純也は、生き残ったほうのものとなることが、純也抜きで即座に決まる。
 純也は、自分がどちらかを選べば殺し合いが避けられるかもしれないと思うが、選ぶことができない。
 また自分を賭けて戦うふたりのキリコの殺し合いを想像すると今まで感じたことがない興奮を覚える。
 その後も、行きずりの殺人事件が続発する。犯人は相変わらず不明。
【13】
 決闘の日、純也が約束の場所に到着したことを合図に、少女の姿に変わったふたりのキリコの戦いが始まる。
 闇の中、音がほとんどない戦いだ。壁も天井も空間も戦いの場になる。
 戦力は互角。壮絶な戦いが延々と続く。両者とも腕がちぎれ、体液を飛びちらし、満身創痍だが、やめる様子はない。
 純也にも止められない。
 突如、片方のキリコが純也に襲いかかる。
 反射的に純也を守ろうとしたもうひとりのキリコに隙ができ、首が飛ばされて倒れる。
 生き残ったキリコが純也の名を呼びながら、ふらふらと近づいてくる。
 純也にはどちらが勝ったのかわからない。
 純也は、急にキリコが怖くなる。
 手近にあった鉄パイプをつかむと泣き叫びながら生き残ったキリコを撲殺する。
「純ちゃん、やればできるじゃん。来年が楽しみよ」
 キリコはそう言って息絶える。
 その直後に純也を尾行していたらしい刑事Aが現場に踏み込むが、既に純也しかいない。
 刑事Aは、純也への嫌疑を捨てず「必ずしっぽを捕まえてみせる」と宣戦布告する。

●4章
【14】
 現在。蟷螂オンナ以外にも数種の虫オンナが加わり、暴力団を食い殺す作戦会議が、まるでクラブ活動のようなにぎやかさで和気あいあいと続く。
 その集団の中に刑事Aもいる。うんざりした顔で黙り込んでいる。
 会話の過激さは、どんどんエスカレートしていくばかり。
 その中できわどい冗談を言えるほどに、純也は虫オンナの感覚に馴染んでしまっていることにふと気づく。
 いつから自分はこんな風になってしまったのか。
 純也は、初めて虫オンナたちに殺人を指示した去年の夏の出来事を思い出す。

●5章
【15】
 去年の初夏。高2
 純也は、去年同様に、蟷螂(かまきり)オンナの幼女キリコと奇妙な関係を続けている。
 純也は、半年前から行方不明になっている幼馴染の女性Hを心配していた。
 Hが素行の悪い大学生グループに付きまとわれていたのを知っていたからだ。
 純也の気持ちに、キリコは気づき、人間の女のように嫉妬する。
 ある日、行方不明のHによく似た3人の少女が純也とキリコの前に姿を現す。
 少女たちは、一斉に「助けて純ちゃん」と叫ぶ。
【16】
 キリコは、その少女たちが虫オンナだと見抜き、一触即発状態になるが、なんとか純也が止める。
 少女たちが何の虫オンナなのか、種類がわからない。加えて、片言の人間の言葉を喋っているが、なかなか意味が通じない。
 キリコが仲介し、最初にわかったことは、行方不明の幼馴染Hは既に死んでいて、目の前の少女たちはその遺体に産みつけられた卵から孵った虫オンナだ」ということ。
 3人の虫オンナそれぞれが、死んだ幼馴染Hの記憶を断片的に持っている。
「人間のオス数匹が力づくで交尾した」などの話を総合すると、幼馴染Hは、大学生グループに強姦されたのちに生きたまま山中に埋められている。
「助けて純ちゃん」は、幾度も繰り返されたHの断末魔であったため、虫オンナたちの記憶に刷り込まれたようだ。
【17】
 純也は、幼馴染Hが自分に好意をもっていたことに今さら気づき、怒りに燃え復讐を決意する。
 それもただ殺すだけでは足りない。幼馴染Hが受けた恐怖や苦しみを味あわせてやると誓い、虫オンナたちに協力を求める。
 が、虫オンナたちには、純也の気持ちが理解できないらしくうまく伝わらない。それをキリコが独特の言い回しで通訳し、虫オンナたちを納得させる。
 問題は、Hを殺した大学生グループは3人だが、虫オンナたちはそのうちの1人しか覚えていないこと。
 とりあえず幼馴染Hに似た虫オンナたちの1人を囮にし、不良学生の1人を捕まえることになる。
【18】
 不良学生のひとりを、虫オンナの1人が誘惑する。まんまとおびき出された不良学生は、その虫オンナと性行為に及ぶ。
 虫オンナは男の身体にねっとりと吸いつく。
 快感に男がうっとり。
【19】
 虫オンナが吸いついた箇所から出血している。
 だが、快感が勝るのか男は気にとめない。
 出血が止まらないことにやっと気づいた男が虫オンナに反撃。
 そこに純也とキリコが踏み込む。
 キリコに傷をさらに深くえぐられ、男は共犯の2人の名前を白状する。
 純也が怒りに我を忘れ、とどめを刺そうとするが、「蛭(ひる)は、雌雄同体なのよ。これからもっと面白いことになる」とキリコに止められる。
 見れば、蛭オンナの下腹部から角状の物が生え、それが男の腹の傷に深々と挿入される。
【20】
 2人目の大学生も、幼馴染Hに似た虫オンナの誘惑に乗る。
 男は、すっかり欲情し虫オンナの衣類を脱がしつつ、身体をまさぐる。
 虫オンナと大学生は、情熱的なとキスを繰り返す。男は歓喜の声を上げる。
 だが、その声は悲鳴に変わる。喉をかきむしる。その喉や胸にみるみる穴が開く。それを押さえつけて虫オンナはさらに口づける。
 その虫オンナの正体は、蜘蛛(くも)オンナ。獲物の肉体を内側から溶かす唾液をドクドクと注ぎ込んでいく。
【21】
 3人目の男は、以前Hと付き合っていた大学生だ。
 共犯の2人が行方不明になっているので警戒している。
 さらに刑事Aが純也たちをしつこくマークしている。
 そのため3人目の大学生が虫オンナを目の前で拉致して、車で逃走するのを防げない。
 刑事Aも2人の行方を探す。翌日、大学生は見つかるが、さらわれた虫オンナは見つからない。
 数日後、瀕死の虫オンナが山中で見つかる。虫オンナは、生きているのが不思議なほど衰弱しきっている。
 幼馴染H同様に暴行されたのちに生きたまま埋められたが、自力で脱出したようだ。
【22】
 虫オンナは、純也の姿を見ると、薄笑みを浮かべて息を引き取る。キリコが小さな虫に戻ったオンナをつまみあげて、あっという間に口に放り込む。
「ここにいた女はどこに消えた。なんなんだ、おまえらは!?」と刑事Aに問われるが、純也は「幼馴染Aもあの男に殺された」と言う以外、黙秘。
 純也は仇を討ちに行こうとするが、刑事Aに「はやまったことをするな。ここから先は警察の仕事だ」と釘を刺される。
 キリコにも止められる。
 キリコは笑いながら純也に耳打ちする。それを聞いて純也はゲラゲラ笑いだす。
 刑事Aは、純也たちを怪訝な顔で見る。
【23】
 後日、刑事Aから純也に電話。
「取り調べ中に例の大学生の身体が破裂し、地蜂の幼虫が無数にわきだした。いったい何をした?」
「俺が言うこと、信用してくれるなら話してもいいですよ。こっちも聞きたいことがあるし、近いうちに会いましょうか」
 純也は、成体になったキリコとベッドを共にしていた。純也の身体は、キリコに噛まれて傷だらけ。
 純也はキリコに問う。
「おまえ、もうすぐ死ぬんだろ?」
「うん、あとちょっとでね」
「そういえば、俺のことまだ食わないのか?」
「だって純ちゃんが死んだら、来年私のこと覚えていてくれる人、誰もいなくなって寂しいものね。でも純ちゃんは私のもの」
「ああ」

●終章
【24】
 暴力団の事務所があるビルの前の道に数え切れないほどの虫オンナが集まっている。
 壁や窓や屋上にもとりついている。
 その中には、羽のある者、触覚が生えている者など、明らかに人間の姿でない者も混じっている。
 純也とキリコは、その様子を近くのビルの屋上から眺めている。そこには刑事Aもいる。
 純也に暴力団事務所の襲撃を勧めたのは、刑事Aだった。
 しばらくすると、窓ガラスが割れる音、悲鳴や銃声が無数に響く。
 刑事Aは、事実を隠ぺいするために純也を銃で撃つ。
「人間の面倒くせえ理屈を押しつけるんじゃねえよ」と純也は叫び、最後の力を振り絞り、刑事Aの首に食らいつき、噛みちぎる。
「純ちゃん、かっこいいよ。好き、好き」と、虫の息の純也にキリコがすがりつく。
 純也は、キリコが自分の身体をムシャムシャと食べる音を聞きながら、強烈な快感を覚える。
【25】
 翌年の夏。
 幼女キリコが純也によく似た男の子の手をひいて、雑踏を歩いていく。2人は、行き交う人々を楽しげに見ている。
 キリコがお姉さん口調で男の子にアドバイスをしている。
「群れから離れている動きが遅いやつや弱そうなのを狙うのよ」
「食べるの?」
「生き残るためのルールなのよ」
「ふーん。ルールじゃ、しょうがないね。でもたまには他の物も食べたいな」
「じゃあ、あとでアイスクリームを買ってあげる。バニラがおいしいの」


(ちなみにイラストは、下記の方にラブコールを送ったら、前向きなよい返事がもらえた)
http://www17.plala.or.jp/shiffon/gallery.html