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最近の日記を転載
桝田 省治

●晶子だ! 2008年03月05日01:53

 セガンチーニと言えば、僕にとって羊を描くのがとっても上手い画家だ。
 そのセガンチーニの展覧会が兵庫県のどこだかの美術館で開催されたのは30年ほど前。ちょうど京都で浪人していたときだ。
 地理が不案内だったためか、その美術館のわりと近所に住んでいたひとつ年上の女性を誘って一緒に羊の絵を見に行った。
(あ、ごめん。うそです。本当は羊なんてどうでもよかったんだよ。だって羊なんて好きじゃないしセガンチーニなんて知らなかったしね)

 その後、彼女は京都芸大に、僕はムサ美に進学。
 大学在学中に一度くらい予備校の同窓会で会ったかもしれないが、以降今に至るまでとくにつきあいもない。
 苗字は覚えていたが、名前が思い出せなった。
 それが今朝、なぜかフルネームで漢字まではっきり思い出した状態で目が覚めた。
 夢を見ていたのだと思うが、中身は思い出せない。
 で、なんとなく閃きを感じたので検索をかけてみた。

 版画家になっていて今はイギリスに住んでいるらしい。
 ある画廊のサイトには写真まで載っていた。
 だからなんだというわけではないが
「ちゃんと芸術家なんだあ!」と感慨深いものがあった。
 だって、美大やら芸大を出て、デザイナーやイラストレーターを生業にしてる人はいくらでもいるけど、本当に芸術家になっちゃう人なんて100人にひとりもいないもの。
 30年前、僕と一緒に退屈な羊の絵を眺めていた、きれいなお姉さんが、実は努力が実る幸運なひとりだったなんて思うとちょっと嬉しい。

 そういえば数年前、小学校の頃の友人を同じようにふと検索してみたら、日産のデザイン部門のたぶん偉い人になっていて……笑った。
 だって小学校の頃の顔のままで、禿げてたんだよ。


●走れメロスを写真に撮る 2008年03月03日09:39

 次男が春から通う学校が先進的な授業をやるらしいと聞き(次男はついていけるのかいな?とちょっとビビって)あれこれネットで情報を集めていたら、けっこうユニークな授業をやっている学校を発見。
 感心したのと、やってる様を想像したら笑えたので紹介しておく。
 以下がその国語の授業。

http://www.kaijo-academy.jp/press/cat1/index_2.html

 今の中学校って、ずいぶん楽しそうだね。


●ちょっと珍しいバカップル 2008年02月26日22:15

 電車の中で周囲の目を気にせず大声で喋っているバカップルってときどきいるでしょ。
 今日は、それの手話バージョンを見ました。
 なんというか、そんなに大きな手振りをしなくても隣同士で座ってるのだから、用件は伝わるだろうに。
 それにキミたち、周りの騒音に影響されない言葉で会話してるわけだしさ。
 聾唖者にもバカップルはいるんだなあと、微笑ましいような、でもやっぱり健常者のバカップルと同程度に、はた迷惑でもあり。

 いや、まあ、その、若いっていいですね。

 追記:
 男の子がどんな冗談を手話で言ってるのかはわからないけど、ときどき女の子のほうが苦笑いしながら、男の子の肩を軽く叩くんです。
 で、おじさんは想像しましたよ。
 これは、きっとどーせ周りの人には内容がわからないだろうと、どんな恥知らずの健常者のバカップルでも電車の中では絶対はばかる類の、きわどい下ネタを男の子のほうが言ってるに違いない、と。

誰か買ってよ、勇者死す、再び
桝田 省治

アップロードファイル 89-1.jpg

 数年前にマーズのサイトに「誰か買ってよ、勇者死す」というコラムをアップした。
 で、その企画にやっと去年、予算がついてカタチになったのが現在配信中の「勇者死す。」である。
http://www.g-mode.jp/title/hero/index.html
 この企画の実現に手を貸してくれた関係各社には、本当に感謝している。

 おかげさまで現在のところドコモの売り切りという形式で配信されているゲームの中では、非常に好成績らしい。
 プレイした方の評価も、今どきのゲームとしては不親切で、プレイヤーを突き放した内容であるにもかかわらず、いい感じのようだ。

 聞こえてくる声としては、Auなど他機種への移植希望、携帯ゲーム機への移植希望が多い。
 たぶんプレイしている方の感想や意見の何倍もの数だ。
 他機種への移植はG-modeさんが、かなり前向きに検討してくれている。個人的にはなんとかなると思っている。
 残るはコンシューマーの携帯ゲーム機への移植である。

 で、僕は再びネットの片隅で叫ぶ。
「誰か買ってよ、勇者死す。」と。
 今度は、携帯ゲーム機への移植だ。

 以下、携帯ゲーム機に移植するなら、こんな風にしたいというポイント。
 まずはとにかくイベントのボリュームアップだ。
 現在の「勇者死す。」に収録されている主要イベントは8つほど。
 これでオールクリアまで20時間、4回程度の複数回プレイが楽しめるボリュームとなっている。
 本作は、そのイベントの重層的な構造からイベントを1つ増やすたびに(理論上は)プレイ時間が加算ではなく掛け算で増える。
 もちろん作業量も掛け算で増えるのだけど(笑)。
 で、携帯ゲーム機に移植するならイベントを現在の少なくとも2倍に増やしたい。
 そうすると、すべての場合を実際のゲームプレイで体験するには1000時間を越える、理論上はね。
 もちろん調整が大変だから、もう少し緩い管理構造に変える。この変更は、そんなに難しくない。
 大雑把なイメージとしては、8回くらい遊んでもまだ当たり前に知らないことが起きる。これくらいを目指したい。

 ということで「勇者死す。」の携帯ゲーム機への移植。
 興味があるメーカーさん、いませんか?

飯淳をもう一度ほめる
桝田 省治

 パタポン、かなり評判がいいらしい。
 独特の面白さがあり敷居も低いせいだろう、プレイしてる人が知人にお薦めしている紹介文もブログなどでよく見かける。
 同じゲームなのに人により紹介のポイントが違う。

 たとえば、よく見かけるのはこんな感じだ。
「音ゲー+SLG」
「とにかくパタポンがかわいい」
「パタパタパタポンが耳から離れなくなる」
「太鼓を叩いているだけなのに楽しい」

 その中にこんな紹介もあった。
「神様になってパタポン族を世界の果てまで導くゲーム」

 こういう風にパタポンというゲームを理解した人が少なくないとしたら、これは飯くんの手柄だ。
 なにしろ前回2007年12月15日(土)に書いたとおり「神様になってパタポン族を世界の果てまで導く」という設定は、現在のグラフィック、システム、音楽などがあらかた決まったあとで付けられたものだ。
 それまでは、プレイヤーは神ではなかったし、パタポンも世界の果てを見たがっていたわけではなかった。
 ようするに太鼓の音の組み合わせで戦術的な指示をパタポンたちに送ることで、設定されたさまざまな障害を乗り越え、パタポンたちを画面左から右へ移動させる、極端に言えばそれだけが決まっていたのだ。
 プレイヤーは太鼓を持ったパタポンの隊長でもよかったし、悪のジゴト族から土地を取り戻すことが目的でもよかった。
 それを神様というプレイヤーの立ち位置を選び、世界の果てを目指すというパタポン自身の自発的な目的を設定することで、このゲームの奇妙なグラフィック、システム、音楽などをプレイヤーに自然に納得させてしまった。

 現在の完成形を見れば、当たり前に思えるかもしれないが、これほどピタリとはまる世界設定を後付けで考えるのは、けっこう難しい。

勇者死す。有馬記念並みの話題に!?
桝田 省治

アップロードファイル 86-1.jpg

 本日から配信になりました。
 それより、これ!

http://www.asahi.com/komimi/TKY200712250143.html

《Web注目ワード》波乱の有馬記念や「勇者死す」
2007年12月25日

 Googleとテクノラティのデータをもとに、Web上で注目されているキーワードを紹介します。(アサヒ・コム編集部)

 ■ブログの話題 トップ10(12/16~12/22)

 1位の〈勇者死す〉は、25日配信開始の携帯電話で楽しむロールプレイングゲーム。プレーヤーは、魔王との闘いで死んだのち5日間だけ命を与えられた勇者となり、消息不明の恋人を探し出す。

 3位「meet―me」は、ネット上に東京の街を再現する和製「セカンドライフ」とも言えるバーチャルコミュニティー。

 5位はゲーム原作のアニメで、タイトルは「ef―a tale of memories.」。最終回に向けての盛り上がりでランクイン。

 【1】勇者死す 【2】ALPSLAB 【3】meet―me 【3】perfume(同率) 【5】ef アニメ 【6】X01T 【7】忘年会議 【8】アイスエイジ 【9】ツンデレカルタ 【9】ワイズノット(同率) 【9】もんじろう(同率)(協力:テクノラティ)

 
 ●有馬記念と並んで紹介されるくらいだから、これはきっと凄いことなんだろう。よくわかんないけど。

PATAPONの地味なシナリオ
桝田 省治

 パタポンのグラフィック、音楽、ゲーム性、どれも非常にユニークだ。
 これら要素に関してはプレイすればすぐにわかるから、発売後はあちこちで語られるだろう。
 だから、へそ曲がりな僕はあえて書かない 。

 僕が開発の中途から参加したとき、一番カタチが見えてなかったのが、世界設定やプレイヤーの立ち位置、ゲームの目的。
 ようするにシナリオ部分だ。

 シナリオライターは、本作の開発現場のプロデューサーでもある飯淳。
 PCエンジンユーザーには懐かしい名前かもしれない。エメラルドドラゴンのシナリオを書いたあの飯くんだ。
 彼は、のた打ち回らんばかりに悩んでいた。
 苦悩の中身は、平たくいうと「パタポンのグラフィック、音楽、ゲーム性、どれも非常にユニークだ。シナリオもそれに負けないようなもんにしたい。あーいうこともやりたい、こーいうこともやりたい」
 ま、こんな感じ。
 エメドラをプレイした経験がある方ならわかってもらえると思うが、彼のシナリオの特徴は、けれんみのある伏線が重層的に張ってあって、それがここぞという場面で爆発する。
 だけど、キャラや世界観、物語で勝負しているエメドラと違って、パタポンは既にグラフィック、音楽、ゲーム性で十分に差別化が図れている。
 というか、むしろ斬新過ぎてユーザーを置き去りにしつつある、商品としてはちょっと危険な領域に突入しているように僕には思えた。
 ユーザーは新しいものが好きだ。
 しかしながら多くのユーザーが求める新しさというのは、半歩、せいぜい一歩先の新しさであって、二歩先はマニアしかついてこない。
 だから、ここでシナリオまで凝ったものにしたら、このゲームは落しどころがなくなる。
 意見を訊かれたから、そう応えた。
 つまり今、このゲームのシナリオが果たすべき役割は、今までにないグラフィック、音楽、ゲーム性などの部品が、その特異性ゆえに作り出したルールをなるべく直感的に理解できるシンプルな設定や目的をユーザーに提示すること。
 たとえば、なぜプレイヤーが太鼓を叩くと大勢のキャラがその指示に従い行進したり攻撃したりするのか。
 なぜパタポンたちは左から右にどんどん進むのか。
 なぜ怪物やら他部族がその行進を止めようとするのか。
 あるいは、なぜ新しい太鼓(コマンド)が都合よく増えるのか、なぜ新しい職業のユニットがだんだん増えるのか。
 そもそもパタポンって何? なんで彼らは歌うの?

 極端なことを言えば、他の部品を最大限に生かすためにシナリオは「殺せ」と。そういう意味の話をした。
 飯くんは、実に頭のいい男だ。
 僕の死刑宣告に対し、シナリオライター飯淳はそれでも抵抗したが、プロデューサー飯淳は納得したらしい。
 で、現在の必要十分な地味目のシナリオがある。

 今思えば、飯くん自身、僕に言われるまでもなく、既に答は出ていて、背中を少し押してほしかっただけだと思う。
(ようするに、この男、いい歳こいてまだ熱く、負けず嫌いなんだよ、うらやましいことに)

 多くのシナリオライターが「俺が俺が」と自己主張の強いシナリオを書きたがる。気持ちはわからないでもない。
 だけど、ゲームにおいては、それが必ずしもベストな選択ではない。
 ということを若いゲームのシナリオライターは、飯くんが書いたパタポンのシナリオから学ぶといいよ。

 
 以下、公式サイトとか応援ブログとか
 http://www.jp.playstation.com/scej/title/patapon
 http://www.buzzlog.jp/index_default.php?theme_id=40