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近況「傷だらけのビーナ」脱稿
桝田 省治

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「傷だらけのビーナ」という400ページ足らずの小説を先月末に脱稿しました。
 内容は、
「女だてらに兵士になりたい少女と、男尊女卑のセクハラオヤジが一千の敵を相手にふたりで篭城【ルビ:ろうじょう】戦に挑む!!」
 てな感じです。
 単純なストーリーに濃いキャラの絡みの面白さだけでグイグイ押す、ある意味でエンターテイメントの王道路線を意識しました。
 感動はしないけど、単純に面白いはずです。
 来週、佐嶋さんとイラストの打ち合わせをする予定なので、発売は10月か11月かな。

「透明の猫と年上の妹 3LDK-RPG」という児童書を今年の頭に書き上げたのだけど、未だイラストレーターが決まりません。
 僕が書いた小説の中で、構成が安定していて、オチがきれいに決まってるという点で、一番よくできていると個人的には思っているので、いろいろ事情があってしょうがないけど、でも残念です。

 今日から「ジョン&マリー 二人は賞金稼ぎ(仮)」というラブコメ(本人はそのつもり)を書き始めます。
 イラストレーターは、僕が「どうしても**さんで」と指名した方なので、1行もまだ書いてないけど、今から本になるのが楽しみです。

 ゲーム関係は、俺屍の続編を含めて、企画書が3つくらいあちこちを回っている状態です。
 ひとつくらい決まるといいけどね。

 ちなみに冒頭の写真は、ビーナの顔です。
 ……というのは“半分”ウソ。

ファラの追憶
桝田 省治

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(ファラ・フォーセットの訃報が届いた日の日記。ようするに転載し忘れていた)

 ファラ・フォーセットは、のちに情報を扱う職業につく僕にとって転換点、あるいは起点となる重要な女性だった。
 チャーリーズ・エンジェル放映当時の僕(小学校高学年か中学生かな)ときたら、この女優がなぜ美人なのか、本当にさっぱりわからなかったのだ。
 だが、女探偵のアクションドラマの主役に抜擢されているくらいなのだから、少なくともこのドラマが制作されたアメリカの基準では、この人は、すごく美人なのだろうということは子供なりに理解できた。
 で、美意識を含め、価値観は非常に多種多様なものだということを痛感したのだ。
 さらに、僕にはそう思えないが、この人は役の上で美人であると想像しながら、チャーリーズ・エンジェルを観ていた。
 そのため情報を記号として捉え、別の記号に変換、置換する訓練も無意識にできていたと思う。
 これは貴重な体験だった。
 今改めて当時の写真を見れば、健康的できれいな人だと思えるのだから、僕の美意識が三十年の間に欧米化されたか、あるいは守備範囲が広がったかだろう。

最近読んだ本
桝田 省治

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●リカ 五十嵐貴久著

 出会い系サイトで知り合った女性は、実は……!?
 といった感じのいわゆるホラー小説だ。

 僕はホラーというジャンルがまったく肌に合わない。
 たいてい読んだり、観たりして後悔する。
 それでもなんだかんだで、このジャンルの作品に定期的に手を出すのは、ごくごく稀ではあるものの、「おいおい、そこまでやっちゃいますか」とツッコミたくなるような、笑えるくらいぶっ飛んだ発想の作品にたまに出会えるからだ。
 本作に関して言えば、2回くらい噴いた。
 400ページほどで読書に費やした時間は正味1時間くらいだろうか、4回くらいは笑えないと、元が取れた気がしないな。

 ちなみに僕が2回笑ったうちの1回はいわゆるオチの部分。
 ただし笑った理由は、あのオチ自体ではないし、その発想の斬新さでもない。
 あのオチをやるためにいくつもていねいな伏線を引いた、まじめな作者の態度に、「バカだな、この人」とニンマリ。
 くだらないことをまじめにやれる人は好きだ。
 読んだことはないが、たぶんこの作者は、傑作かどうかはともかく、常に一定以上の面白いモノを書けると思う。

●退屈姫君2、3 米村圭伍著

 正確なタイトルは
「退屈姫君 海を渡る」
「退屈姫君 恋に燃える」です。

 歴史の先生でも知らないような知識に基づいた時代考証をしておきながら、「***という記録があるので、本当は*年早いのだけど、そのほうが話が面白いので、すみません、わざと間違えます」と読者に断わりを入れ、謝ってから、話を進める、そういう奥ゆかしいのか図々しいのか、よくわからない米村圭伍先生に、僕はもうメロメロ(死語)

 このシリーズ、あと1冊で終わりらしい。
 正直読みたくない。
 人生の愉しみの0.1%くらいが失われてしまいそうだから。

●青空の卵 坂木司著

 売り文句は「引きこもり探偵」ということらしいけど、引きこもりの中ではそうとう軽度の部類で、そこはちょっとウソだ。
 ミステリーとしては、ストーリーも特段目を見張るものはない。
 だが、読んでよかった。本作の中の空気が心地がいい。
 何がいいかといえば、キャラクターだろう。
 犯人も含め、登場人物全員が、どこかしら心に傷だか穴だかがある。
 他人とかかわりたくないのに、一人では生きていけない。そんなタイプだ。
 そのせいで、全員が無器用で懸命で優しく切ない。
 一番聡明なはずの引きこもり探偵も同じ。
 本作の語り手の視点までもが同じ。
 ある意味、全員が引きこもり属性と言ってもいいかもしれない。
 そんなキャラクターばかりが登場し、その連中が絡むのだから、実に頼りなくフワフワした感じ。
 それが実に心地いい。