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PATAPONの話
桝田 省治

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(C)Sony Computer Entertainment Inc. (C)Rolito/Interlink.

「パタポン」という妙なゲームが来週発売になる。
 ゲームの中身や価格、ハードに関しては下記を見てほしい。
 http://www.jp.playstation.com/scej/title/patapon

 今日は、このパタポンの話をする。
 実は、1年ほど前から僕はこのゲームの開発に参加した。
 開発期間は2年くらいだそうだから、ちょうど半分くらいのあたりだ。
 僕が加わったとき、ゲームを構成するあらかたの部品の構想はできていた。
 その部品一つひとつは、グラフィックも音楽もゲーム性も実にユニークで「ああ、このスタッフはかなり大きな金脈を掘り当ててるかもしれないな」と感じた。
 ただ、その試作ゲームを遊んだとき、僕には、どんなユーザーがどんな風にこのゲームを遊ぶことになるのか、想像できなかった。
 また、このゲームの新しいルールや遊び方を、どうやってプレイヤーに伝えるつもりなのか、具体的な展望がないように思えた。
 ようするに僕の言葉で言えば「落しどころ」が決まってないように見えた。
 僕も、ゲームに新しいルール、今までにないゲーム性を積極的に持ち込むほうだと思う。
 だけど、僕は、新しいルールやゲーム性を提案するとき、まず「落しどころ」を確定し、それに合わせて部品を調達していく。そんな風な過程をとることが多い。
 だから、僕の企画するゲームは、明らかに新しいルールやゲーム性が提案されているにもかかわらず、部品は全て既存のものである場合すらある。
 ところがこのパタポンの場合、それが逆で、新しい部品がいろいろ取り揃えられていたが「落しどころ」が決まっていないという、僕には信じられない状況だった。
 新しいルールや今までにない面白さを、ユーザーに伝えるのはとても難しい。
 たとえば、リンダキューブ。
 ポケモンはまだこの世にない。そういう状況で「モンスターを探して捕獲して収集する」というゲームを面白いとユーザーにわかってもらうにはどうすればいいか、かなり悩んだ。
 シナリオやキャラ、システム、音楽、声優の演技。ファンの方々はいろいろ褒めてくれるが、僕自身があのゲームで一番、自分を褒めてやりたいのは「箱舟」というキーワードを見つけられたことだと思っている。
 とりあえず冒頭に「箱舟」が出てくれば、細かな説明がなくても誰でもこのゲームが「動物を集めることが目的だ」と一瞬で理解できるからだ。
(あ、そうそう、アルファの佐々木くんのおかげで、あれこれ面倒なことに目処が立ってきたので、そのうちアーカイブスで配信できそうです。リンダファンの皆様、もうしばらくお待ちください)

 で、結論を言うとこの「パタポン」。
 さまざまな部品が新しいにもかかわらず、煩わしいルール説明を聞かされることもなく、すぐに楽しい。
 ゲームのノリも感覚的にすぐに理解できる。
 実は、これ、当たり前のようだが、とても難しい。
 ちょっと思い出してみてくれ。
「新しい!」「世界初!」「斬新!」こんな謳い文句のゲームの大半が、妙に難度が高かったり、必然性がなかったり、操作性がよくなかったり、面倒なだけだったり、ビヨビヨしてたり、ようするにイマイチこなれてない。
 もちろん、開発の途中段階では、パタポンもご多分に漏れずそういう状態の時期があった。
 が、製品をプレイしてみればわかるが、このパタポンがとんでもなく斬新なゲームであることに気づかないくらい、あるいはこういう類のジャンルのゲームがずっと前からあったかのように、自然に楽しい。
 なぜ、そうなったかといえば、実に簡単。
 執念深いスタッフ各人が、時間をかけて丁寧に、問題を一つずつ解決した。本当にただそれだけのことだ。
 丁寧に作られたゲームは、プレイしていて気持ちいい。
 そういう当たり前のことを久しぶりに思い出させてくれるゲームに仕上がっていると思う。
 
 店頭で購入するのが難しいくらいに出荷本数が少ないらしい。
 上の画面写真でピンときたら、その勘は外れてない。今すぐアマゾンなりに予約したほうがいいよ。


 ●愚痴:
 パタポン。ファミ通でプラチナ殿堂入りだそうな。
 実にめでたいことである。
 が、正直、複雑な気分だ。
 僕は、SOSをもらって途中から手伝った他人が企画したゲームでは、公にできないものも含めて過去にもいくつかプラチナ殿堂入りになったタイトルがある。
 でも、僕が企画したゲームでは、せいぜいシルバー止まりだ。
 ありえないことだが、僕は数字だけ見れば、調整役のほうが向いてるらしい。
 ……笑えない。

 ●勇者死す:
 せいぜいシルバー止まりのことが多い僕が企画したRPGだよ。
 こっちのゲームの話も書くつもりだったが力尽きた。
 とりあえず公式サイトがオープンしたそうなので、その紹介だけ。
 http://www.g-mode.jp/title/hero/index.html

彼女のジョーク
桝田 省治

 今朝、死んだ友人の夢を見た。
 僕は、彼女が人前で大口開けて笑っているのを、とうとう生前一度も見ることがなかった。
 誤解がないように断っておくが、彼女がクールな性格であったわけでもユーモアのセンスがなかったわけでもない。
 むしろ普通の人が顔をしかめかねないかなりきわどいジョークでも「うふ、なかなか面白いね」くらいのノリで付き合ってくれた。
 それに大口開けて笑いはしなかったが、微笑みはとても優雅でかつチャーミングだった。
 で、僕はその彼女に夢の中で、あるジョークを言った。
 例によって、大口開けて笑ったりはしなかったものの
「今まで省治くんから聞かされたジョークの中では、一番面白かった。もう少しで声をあげて笑いそうになったよ」と褒められた。
 僕は有頂天になった。
 だけど夢の最後にこう忠告された。
「でも生きてる人には、ちょっときつすぎるから言わないほうがいいよ」と。
 さらに、僕という人間をよく知る彼女は
「と言ったところで省治くんのことだから、いずれ言うに決まってる。だから、こうしましょう」

 というわけで、目が覚めると、この夢、そのジョークの内容だけが思い出せなくなっていた。
 かなり切れ味のいい、辛辣な内容だったことは確かなんだけど。
 たぶん、死ぬ前に見る最後の夢の中で思い出すことになる。
 なにしろ彼女のジョ-クときたら僕のジョークよりずっとタチが悪かったから。

勇者死す、の話三題
桝田 省治

●勇者死す、概要

 これを面白いと思うかどうかは人それぞれですが
 面白いと感じる人にとっては、よく宣伝文句にあるとおり
「今までにない面白さ」だと思います。

 ちょうど今、プロデュサーに頼まれた広告用の原稿を送ったとこなので、まずは設定から


勇者は、ついに世界を滅ぼそうとしていた魔王を倒した。
だが、その代償に命を失った……。

しばらくのち、奇跡が起きた。
神の導きにより、勇者は五日間だけの生を得たのだ。
目覚めた勇者は、世界に平安が訪れたものと信じていた。
だが、そうではない。

戦時中は協力していた人間と亜人種が小競り合いを始めていた。
失業した騎士や傭兵が町にあふれかえっている。
戦火の激しかった地区と免れた地区に埋めがたい格差が生じていた。
だが、国全体が疲弊し、魔物に焼かれた町の復興は滞っている。
新興の商人たちと既得権を守ろうとする王族が反目していた。
辺境の洞窟や廃墟には、今も魔物の残党が立てこもっている。

そんな混乱の中、勇者は行方不明の恋人を探す旅に出る。
彼に残された時間は、泣いても笑ってもわずかに五日……。


 ま、こんな感じ。
 スタート時の勇者は、魔王を倒したそのままの最高の強さ、装備、財産、地位名声を維持しています。
 ですが、時間経過とともに「死」が近づき、体力は衰え、呪文は忘れ、今まで軽々と扱えた剣すら重く感じ始めます。
 そんな中で何をするか?
 逆に言えば、何をしないでおくか?

 何をしても五日(実時間で6~8時間)で終わり。
 勇者が満足を得るのは、葬儀に集まった人々の弔辞だけ。

 ゲーム性としては、ぜんぜんジャンルは違いますし、予想はしてませんでしたが、僕はなぜかテトリスに似ていると感じました。
 ブロックの形を見て、落ちるまでの間に最善と思われる場所に可能な限りはめていく。それぞれの判断が真に最善であったかどうかわかるのは、たいていゲームオーバーのとき。
 最初は、余裕を持ってできていたことが時間経過とともに「え?」「うそ?」「そんな!」になってくる。
 あの感じを数時間かけてやってる気がします。

 最初に言ったとおり、それを面白いと思うかどうかは人それぞれ。
 たぶん「私の人生もあと**年だ」とか「今、死んだら葬式は誰が来るんだろ」とか「あのとき**を選んでおけばよかった」とか、そういうことを考え始める年齢に達している人には、たぶん面白いと思います。

「切ない気分に浸りたいときにどーぞ」


●勇者死す、構造の話

 昔、マーズのコラムにトランプの「神経衰弱(たぶん今はこの呼称じゃないと思う)」と「ババ抜き(これも酷い名前だ)」は、構造としては同じなんだよ、という話を書いた。
 かいつまんで言えば、伏せられている2枚の札の数字が同じなら取り去るというルールがあって、あとはそれが初期状態で場札か手札かの違いがあるから、たくさん集めた者勝ちか早く無くした者勝ちかの勝利条件が変えてあるだけ。両者は構造的にはほぼ同じ。
 同じなのに面白さはまったく違うよね。
 そんな感じの話だ。

 で、勇者死す。
 勇者死すとDQやFFを代表とする多くのRPGにもこの関係が成り立っている。
 普通のRPGでは、体力、お金、魔法、装備などの要素をうまく交換しながら増やしていく。で、実際は増やす過程が面白いのだけど、結末としてはたいていは巨悪を倒すことが目標になってる。
 それに対して「勇者死す」の場合は、初期状態が体力、お金、魔法、装備などの要素が最大値。
 なにしろ魔王を倒した直後だ。
 これを時間内に、他人の幸せといかにうまく交換して減らしていくか。この過程がミソだ。で、結末はその結果発表としてのお葬式。
 増やしていくか減らしていくかの違いだけで、要素を分解していけば構造的にはよく似ているし、部品もほぼ同じ。
 だけど、神経衰弱とババ抜きの面白さが違うように「勇者死す」と多くのRPGは面白さの質が違う。

 楽しみにしてて。
 けっこう思い切ったチューニングにしてみたから。


●勇者死す、お気に入りのメッセージ

 他のRPGでは、まずお目にかかれないメッセージをふたつ。
 パラメータが低下していくとときどき表示されます。
 まずは、これ。

「“魔法名”の呪文が思い出せない……」

 四十歳くらいから顕著になりますが、なんでもない単語が思い出せなくなります。顔は覚えているのに人の名前が出てこない。そういうこともよくある。
 システム上の処理としては、今までメニューにあった魔法を削除するだけなんだけど、ダンジョンに行ってボスを倒して、さあ移動の魔法で一気に町へ帰ろうと思っていたらその直前に、その魔法が消えるとけっこうショックです。
 それに魔法のメニューにどんどん空欄が増えていくのがなんとも虚しい。
 あと、これ。

「“装備名”が重く感じるようになった……」

 1キロくらい走ってもぜんぜん平気なつもりが200メートルと走らないうちに息切れして、あれ? こんなはずじゃあ、みたいな。
 そういえば、こないだも本を詰めたダンボール箱を発送するのに、息子に運んでもらったよ。
 こっちは、力パラメータの半分以上の武器や防具を装備した状態だと、その差分を素早さのパラメータから引いてる。
 素早さが下がってくると、たとえばゲームスタート時、モンスターが4匹出てきたとしても、ずっと俺のターンみたいな感じで主人公ひとりで4匹とも倒せていたのが、どれだけ攻撃力があろうとも行動の順番自体が回ってこない。
 中盤から若いキャラを仲間にすることができるのだけど、けっきょくその連中だけでモンスターを倒して、主人公出番なしで戦闘が終わることもしばしば。
 いや、ホント「およびでない? こりゃまた失礼いたしました」と言いたくなる。
 で、衰えた体力に合った装備に交換すると、ターンはまともに回ってくるようになる。でも、攻撃しても当然大した威力はない。せいぜい仲間の回復をしたり、邪魔にならないように身を守ったり。
 そういう地味な仕事って俺の担当じゃなかったんだけどなあ、と遠い目で見てみたり。

 そういえば、ここ1年、あるゲームの監修というか助言というか、そんな仕事をやらせてもらってた。
 その打ち合わせ中にも何度か思ったよ。
「こういうまとめ役って、僕の仕事じゃなかったんだけど、おかしいなあ」って。


「桝田省治は、細かい町の人のメッセージ書きが辛くなった……」
 とか、まあ、さすがにそういうことはないけどね。

 でも、まあ、200メートル走っただけで息切れするということを受け入れれば、若いときより5分早くうちを出るようにすればいいだけで、ゆっくり歩けば今まで気づかなかった人様の家の庭先の花も目に入るし、悪いことばかりじゃない。
 たぶん歳をとるって言うことは、そういうことなんだよ。

「勇者死す」と「虫歯」の関係
桝田 省治

 ゲームの仕様を決めるとき、たとえばこんな風なことを考えているというのを今日は公開してみる。
 宣伝もかねて今月末にドコモで配信予定の「勇者死す」を例に話そう。
「勇者死す」は「勇者は魔王を倒した。だが余命5日」そんな感じの設定で、その5日間に何をするか、というRPGだ。
 システムとしては、余命5日の間に身体パラメータが減退し、5日目に確実に主人公は死ぬ。
 ところで、僕は死んだとこがない。さらに不治の病にかかったこともない。たぶん99%以上の方がそうだと思う。
 このような状況下で「余命5日で身体パラメータが減退していく感じって、きっとこんななんだろうなあ」と誰もが納得する、そんなパラメータの落ち方をどう構築していくか。
 それが以下である。

1.衰弱のイメージ:
 大部分のプレイヤーは、体を蝕む不治の病にかかった経験はない。せいぜい他人の癌の闘病日記を読むか、身内にそういう人がいれば話を聞くか、であって自分の感覚として知る人は、まあいない。
 ということは、本ゲームの勇者の衰弱も、所詮は想像の範囲内でのリアリティがあればいいということだ。
 僕が想像する衰弱から死に至る過程は、特撮映画でよく見るダムの決壊シーン。
 いきなりは壊れない。いくつかの予兆があり、目に見えるひびとか水漏れが始まってからは全壊までは瞬く間。時間に比例して壊れるのではなく、途中までは内部的に静かに崩壊し見た目はあまり変わらず、溜めて溜めてドカン! みたいな感じだ。
 さらに一番イメージが近いのが「虫歯の進行」。日本人なら8割以上の人が経験があるはずだ。このイメージは共有化しやすいだろう。
 先のダムの決壊と共通するのは、初めの頃はどうということはなく、兆候はあるもののまだ大丈夫だと思っていたら、気づいたときには手の施しようがなく完全に手遅れになっている。そんな加速度的に感じる進行具合だ。


2.勇者の衰弱過程を虫歯の進行と並べてみる:
 イメージをさらに具体化するために勇者に残された5日間に、虫歯の進行を当てはめてみる。

・1日目:
 学校の歯科検診で虫歯が見つかるが自覚症状は、まったくない。
痛みを感じる瞬間もあるが、瞬間であり、日常生活の中の痛みのほうがむしろ目立ち、気にならない。
 自分が虫歯だということを忘れることすらある。

・2日目:
 強く噛みしめる、冷たい水を飲むなど特別なことをしたときのみ、虫歯の進行を一瞬だけ実感する。
 だが、この段階では日常生活にほとんど支障はない。

・3日目:
 虫歯の側で噛むと明らかに痛いので、無意識に反対側で噛むようになる。
 疲れが溜まったときには我慢できない痛みを感じる。だが、弱い鎮痛剤で抑えられる。 唐突に痛みが消えることもある。
 虫歯の部分を使わないように注意し、ときどき薬を飲めば、痛みは抑えられ、まだ日常生活に重大な支障はない。

・4日目:
 恒常的に鈍痛。歯だけでなく肩こりや頭痛も始まる。トントンと指で弾くだけで激痛。
 周囲からも「どうしたの?」とか「顔色悪いよ」とか指摘される。
 飯が食いにくい、睡眠が浅い、集中力が減る、鎮痛剤の副作用などで日常生活に支障が出る。

・5日目:
 間断なく襲う激痛。顔の形も変わる。薬も効かない。日常生活が困難になる。
 歯医者に行く覚悟を決める。だが、当然手遅れ……。


3.要素の抽出と、本ゲームでの表現:
 前述の虫歯の進行に出てきたキーワードを、本ゲームの衰弱に当てはめてみる。

・痛みの大きさ:
 これは減るパラメータの値の大きさ、あるいは、現状の最大値に対して減ずる割合の大きさで表せるだろう。
 ちなみに気にならない痛みとは、たとえば1戦闘での累積ダメージが10のバランスのとき、5程度最大HPが減ってもそんなに気にならない。

・痛む頻度:
 パラメータが減る頻度が増えていく。
 たとえば最初は、ゲーム内時間で4時間に1度だった減少が、2時間に1度、1時間に1度になれば、病魔の進行が速くなった気がする。

・薬でごまかす:
 中盤あたりでは、下がった特定パラメータを一時的に誤魔化すのに、薬やパーティを増やす等でしのぐ手立てがこれに当たるだろう。

・薬の副作用:
 薬が効いている間、なんらかの状態異常が起きる。それと引き換えに、減少分のパラメータのいずれかを補う。

・特別なときに実感:
 ボスクラスの敵との戦闘にてこずる。
 通常攻撃ではさほど感じないが、属性のある魔法攻撃を受けるとダメージが大きい。
 魔法にかかりやすい。
 ポンポン出ていた会心の一撃が目に見えて減る。
 痛恨の一撃を受けやすい。
 攻撃をミスする。
 ターンの回りが遅くなる。
 特定の武器や防具が使えなくなる。特定の魔法が使えなくなる。

・痛みを感じない工夫や注意が必要:
 魔法属性やパーティの仲間の性能を考慮したうえで、アイテムやメンバーを選び、ボス戦に挑まないと勝てない。
 用途が限定的な装備をあえて使うなんてのもこの類だろう。

・他人に指摘される:
 NPCのメッセージを差し替える。主人公の顔グラフィックが変わる。
 青ざめるとか、目の下に隈ができるとか。

・恒常的に痛い:
 何もしなくても状態異常になる。治療してもまたすぐに状態異常になる。

・日常生活に支障:
 大雑把な目安。初期状態の主人公のパラメータを10割とすると、敵のパラメータの目安は、8~7割前後がボス、6割が強めの雑魚、5割が平均的雑魚、4割が弱い雑魚。
 勇者にとっての日住生活に支障が出るレベルとは、ボスに勝てなくなることを指す。

 こんな感じでイメージを決めて、それから具体的なパラメータの種類を設定したり数値の上限下限をどれくらいにするか決めたりしていく。
 そうすると、本ゲームのHPの意味とか時間の概念とか考えるときの手がかりになる。

 たまにはこういうネタバレも面白いだろ?

家族の話
桝田 省治

 以下、mixiの日記より抜粋。

●プロシュートという物を食す。 2007年10月15日

 昨日、久しぶりに娘と二人だけで出かけた。
 本当は妻と娘が出かける予定であったのが、急に妻の都合がつかなくなり、かつそのイベントに娘が行きたがったので、僕が連れて行くことになったわけだ。

 国際展示場駅前のパナソニックセンター。
 そこで子供向けのイベントが定期的に開催されているらしい。
 今回のお題は、正確ではないが「数学を利用したマジック」てな感じ。

 派手なリアクションができる芸人など会場にいないから、マジックと銘打っているわりには大して盛り上がらなかった。
 が、まあ、なかなか興味深い内容だった。

 妻と娘は何度かパナソニックセンターのイベントに参加している。
 ここに来たときは「昼食はここなのだ」という娘の主張に従い、イタめしのファミレスに入る。
 で、娘はこの店に来たときは「いつもこれにしている」という「プロシュート」なる物を注文。
 とくに食べたい物もなかったので、僕も倣う。

 プロシュートとは、生ハムとパンだった。
 生ハムは妻の好物だ。僕はとくに好きなわけではないが、結婚してから付き合って食べるようになった。
 で、この店のプロシュート。それなりに美味しいとは思う。
 まあ、だが、それは僕にとっては別にどうでもいい。

「へ~~そうなんだ」と思ったのは、娘が僕の知らない間に、僕の知らない食べ物を好きになり、その好みを主張したことだ。
 当たり前ではあるが、娘は僕の複製や分身ではなく別の人間であり、彼女なりの嗜好を持ち、たぶん同じ場所にいても僕と違うものを見ている。
 わかってはいる。わかってはいるが、すこし戸惑った。


●不思議体験 2007年10月16日

 こないだの日曜、娘とふたりで出かけたことは既に書いた。
 実はあの日、不思議な体験をした。
 が、それは体験と言うよりは、僕の思い込みあるいは錯覚だと考えるほうが合理的に説明できる。
 そういう類の話なので、書かないでおいたのだが、日を追うごとに映像が鮮明になる。
 ま、信じてもらおうとは思わない。

 国際展示場駅前の広場、僕と娘は駅に向かってゆっくりと歩いていた。
 子供というものは、広い場所に来ると理由もなく駆け出す。
 娘も鳥のマネでもしているのか、両手を広げてひとりで走り始めた。
 僕の周囲、10メートルくらいをグルグルと回っている。
 そのとき、ほんの一瞬だが娘の姿を見失った。
 といっても、たぶん振り向いて名前を呼べばすぐに見つかる範囲にいることはわかっていた。
 ふと見上げると頭上を鳥が飛んでいるのが見えた。

〈ここからが不思議体験〉
 なぜだか知らないが突然、僕の視界に僕を中心にした半径20メートルくらいの俯瞰図が重なった。
 ちょうど頭上を飛ぶ鳥の目を借りれば、そんな風に見えるだろうというような景色だ。
 僕の右斜め後方5メートルくらいのところに娘がいるのもはっきり見えた。
 娘の姿を確認した瞬間、その不思議な映像は消えた。

 で、右後方を振り向いたら5メートルほど後ろから娘が駆けて来るところだった。
 いや、まあ、ただ、それだけ。


●ヒだっけ? メだっけ? 2007年10月16日

 昨日22時過ぎ、帰宅すると次男がひとりリビングで漢字の書き取りをしていた。
 もうすぐ学校で漢検があり、彼は確か準2級を受けるらしい。
「モンブカガクショウは、文章の文に部分の部、理科の科に学ぶで合ってる?」と問われ「そうだ」と答える。
 続いて「ところでショウなんだけど“少”ないの下は“ヒ”だっけ? “メ”だっけ?」
「目だよ」
「あぁ……」とあからさまな溜息。
 どうやら次男は間違えて覚えていたらしい。

 確かにパソコンの小さな字では「省」の下は「日」と表示される。
 だが、父親の名前くらい正確に覚えてもらいたいもんだ。


●そういえば長男が家にいない 2007年10月24日

 ……と思ったら一昨日から修学旅行に出ているらしい。
 長男は、金はかかるが手間はかからない。
 学校も塾も自分で決めてきて、振込用紙や請求書だけ、そっと目立つところに置いて去る。
 そういうやつだ。
 存在感は、果てしなく薄い。
 うちにいてもたいてい自室で寝ている。
 スイッチを切るように10時間くらい平気で寝る。

 次男がうちにいないとすぐわかる。
 怒鳴り声が聞こえないからだ。
 次男は、人を怒らせることに才能に近いものがある。

 娘がいないと笑い声が消える。
 まさしく明かりが消えたようだという比ゆに合う。

 ところで、長男が通う中学の修学旅行。
 ちょっと趣向が面白い。
 広島、神戸、京都と移動するらしいのだが、学校側が用意するのは宿泊するホテルだけ。
 あとは数人のグループの自由行動。
 もちろん事前にスケジュールを学校に提出しチェックを受けるのだろう。
 だが、うちの長男の修学旅行のテーマは、冗談か本気かは知らないが「関東と関西の漫画喫茶の品揃えの比較」だとか、ほざいていた。
 ま、それも確かに広義では「修学」には違いないし、現地に行ってみて自分で見聞きして初めてわかることは多い、けどな。


●お兄ちゃんの悪影響 2007年10月28日

 近頃、小二の娘が壁を登る。
 幅一メートルほどの廊下の左右の壁に手足をつけて少しずつ登るのだ。
 天井近くから「見て見て」と嬉しそうに声をかけてくるのだが、
見ているこっちは、足を滑らせて墜落しそうでそれどころではない。
「危ないからやめなさい」と叱るがいっこうに聞かない。
「だってヒロちゃん(次男)もやってたもん」というのが、娘の言い分である。

 さてその次男である。
 来年早々中学受験であるにもかかわらず、さっぱり勉強しない。
 あまり口うるさく言いたくはないが、なにしろ彼は受験生であり、現在のところ志望校の合格率は30%。
 つい「勉強しろ!」と怒鳴る。それに対して
「だってナツも(長男)勉強してなかったもん」というのが、次男の言い訳である。

 確かに長男がうちで勉強しているのを僕も見たことがない。
 なのに、それなりの学校にまんまと受かった。
 が、これにはわけがある。長男には妙な美学があるのだ。
 努力しているところを近親者に見せるのは、彼にとって恥ずかしいことらしい。
 たとえば、僕は偶然、塾帰りの長男と同じ電車に乗り合わせたことがある。
 声をかけようかと思ったが、あまりの異様な光景にためらった。
 彼は床に座りこみ座席をテーブル代わりに算数の問題を猛スピードで解いていた。
 それも満員電車の優先席である。迷惑この上ないが本人は気にする様子もない。
 だいたいそばに父親が立っているのに気づきもしなかった。
 また、保健室のベッドを消しゴムのカスだらけにして困るとの苦情も小学校から来た。
 彼は体調不良を理由に授業をズル休みし、保健室のベッドを勉強部屋にしていたらしい。
 その苦情の件を長男に伝えたが、筆記用具をボールペンに替えただけで、保健室の利用はけっきょく卒業まで続いたようだ。

 兄弟でも三者三様である。
 得意不得意も違う。
 なのに真似しなくていいことばかり真似をする。

 ちなみに件の長男のもうひとつの美学は
「ギリギリでパスすること」
 たとえば60点が合格ラインなら、彼にとって100点より60点のほうが何倍も価値がある。
 150人で足切りなら、147~150番あたりがしびれるらしい。
 それを達成するために必要な最低量と最短時間を見積もり、本当にそこを狙ってくる。

 親にとっては、嫌な美学だ。
 
★ハルカ後編(仮)執筆中

 現在の進捗状況は10%くらい。

★新作ゲームを2タイトル発売予定

 12月に僕が制作にかかわっているゲームが2タイトル発売される予定。
 詳細は、そのうち。