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ゲームデザイン脳 見本誌到着
桝田 省治

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 昨日「ゲームデザイン脳」、段ボール箱1箱分の見本誌が到着。
 どうやら大きな書店が大量に注文してくれたらしく、その販促用にサイン本を、ということらしい。
 で、技術評論社の美人編集者から「本にサインして送り返せ。一日でも遅れたらぶっ殺す」と脅された。
 美人に脅されるのは、ドキドキするなあ。
 罵倒もされてみたいから一日遅れで発送してみようかな……と思ったり。

 何十回も同じサインしていると、自分の名前ですらヘンに見えてくる。それに飽きる。
 で、「柳田省次」とか、ついハズレを混ぜたい誘惑に駆られる。

 ごめん。実はときどき混ぜてる。
 だってさ、桝田省治のサイン本と信じて買って、よくよく見たら「柳田省次」って笑えるだろ?
 1700円も払ってハズレはまずいかな。まずいよね。

 そういえば、昭和40年くらいに発刊になった本を古本屋のネットで見つけて「汚れあり」と注意書きがあったけど、どうしても資料として必要だったし、安かったし、「ま、いいか」と買ったことがある。
 届いたら作者のサイン入りのきれいな本だった。

 結局、ぶっ殺されるのはやっぱりイヤなので、サインペンを買ってきて、1時間くらいかけて書いて、昨夜のうちに返送した。

 ついでに朝までかかって献本先のリストを作りつつ、見本誌を読み返してみた。
 僕の企画したゲームを一般のユーザは「よくこんな突飛なこと思いつきますねえ」と感心し、業界の人は「よくこんな企画(ネタ)、通しましたよねえ」と呆れる。
 でも僕がいつも苦労しているのは、この二つの狭間にある。
 つまり業界人なら一度は思いつくが結局あきらめるネタを、ゲームあるいは商品として成立する、つまり通る可能性のある企画に加工すること。
 ここが一番アイデアがいる。
 ……という苦労には、あんまり気づいてくれないね。

 ま、大半は倫理規定のかわし方なんだけどさ(笑)。
 中盤はそんなどうでもいいテクニックまで書いてある。
 http://bit.ly/gamedesignnou

○追記
 見本誌の数がけっこうあるみたいなので発売前に手に入れて、「面白かったら書評を書いたろか」というメディアの皆様、遠慮なくこちらに。
 たぶん性格の悪い美人編集者が見え見えの愛想笑いで対応してくれます。
 https://gihyo.jp/site/inquiry/book?ISBN=978-4-7741-4192-3

これ読みました。
桝田 省治

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●イン・ザ・プール/空中ブランコ 奥田英朗著

 デブでオタクでマザコンの奇妙な精神科医が患者を治療する話。
 たいへん面白かった。
 このキャラと設定を思いついた時点で勝ちだと思う。
 続けて直木賞の「空中ブランコ」を読むつもり。

         ◆

「空中ブランコ」も読んだ。
 表題の「空中ブランコ」という短編はいい話だった。
 他の4作も粒ぞろいだったが、前作の「イン・ザ・プール」のほうが面白かったな。
 たぶん、伊良部という精神科医の不気味さが前作のほうがインパクトがあったせいだろう。
「空中ブランコ」では、無邪気で憎めないいい人っぽいニュアンスが強まって、なんだか安心して読めてしまうところが予定調和で「異常VS異常」のドキドキ感が薄らいでる。

ジョン&マリー 支援6 他メモ
桝田 省治

●達成目標

 シリーズ化を念頭に置いた1巻目なので、達成目標はふたつ。

 ひとつは「ジョン&マリー」主人公ふたりに対する読者の好感度UP。応援したい、先行きが楽しみ。そういうキャラにすること。よって、ふたりのキャラが立ち、関係性がわかりやすいイベントで構成した。

 ふたつ目の達成目標は、「不可能と思える莫大な結婚資金を貯めるために賞金稼ぎになった若い男女が旅をしている」という基本設定の理解。その設定に対する興味を継続すること。

 このふたつの達成目標を最優先したので、一癖二癖ありそうな脇のキャラは、どんなにおいしいキャラも顔見せ程度に抑えた。
 また、ジョンにかけられた厄介な呪い、諸事情により使えないマリーの魔法など、いくらでも膨らませられる設定も軽い紹介だけにとどめた。

 ここまでに上がっている感想を読ませてもらうと、おおよそ僕が想定した着地点に収まっているように思う。
 あとは春先あたりに「2巻はどうしますか?」とハヤカワの編集から連絡が来れば、作戦成功で万々歳。(続く)
 http://bit.ly/JohnMary

○その他メモ

【透明の猫と年上の妹】
 イラストのラフが桜瀬さんから届く。女の子の服を替えたいとのことで3点ほど候補の絵が添付されていた。
 衣装に特にこだわりはないので「じゃあ、おすすめのA案。ただし夏なので素足で」と返したところ、「Aの服でソックスをはいてないのはヘンですから、素足が合う服をもう一度考えます」と言われた。
 申し訳ないが、そのへんのセンス、僕にはさっぱりわからないのであがったイラストに合わせて、小説の本文を直す予定。

【傷だらけのビーナ】
 イラストレーターが未定。美少女よりもカッコの悪いおっさんおばさんを魅力的に描けて、止め絵でなく動きを強い線で思い切りよく描ける人を探しています。「なら、俺だ!!」という方、連絡ください。

ジョン&マリー 支援5
桝田 省治

●わかりやすさの工夫ふたつ

 大雑把なプロットができた段階で、起承転結にはめてみたところ、話のテンポがかなり速くなりそうだということが判明した。
 次々に意外なことが起きるテンポが速い話はわりと好きだ。
 だが弊害もある。
 話のテンポが速いと、僕の技量では、伏線を読み飛ばされやすい。
 また、次々にイベントが起きると、主人公の目的を読者が忘れがち。
 そこでふたつほどベタな工夫をした。
 伏線を読み飛ばされることを前提に、各章の最後に「伏線の確認」、言い換えれば「次章の見所」を、連載漫画の煽り文句のように「果たして***の運命やいかに」と数行入れることにした。
 さらに、ジョンとマリーの目的が「結婚資金の調達」であることを読者が忘れないように、各章の最後にその章の収支を表す「レシート」を添付した。
 章末に付けたふたつの直截な工夫で、話のテンポを損なわず、かつかなりわかりやすい話になったと思う。(続く)
http://bit.ly/JohnMary

ジョン&マリー 支援4
桝田 省治

「ジョン&マリー」を書き始める前にいくつか決めたことがある。

 一つ目は、シリーズ展開のしやすさ。これは水玉さんとの作業があまりに楽しく、これきりというのがなんとも寂しかっからだ。
 そこで水戸黄門のような大いなるマンネリを一作目から意識した。
 水戸黄門のように旅をし、新しい町に着けば新しい趣向の事件が待ちうけ、それを解決しては次の町に向かう。
 この基本を設定上の必然として組み込むことにした。
 で、考えたのが公的警察組織の繁忙期にのみ臨時で雇われる賞金稼ぎという職業だった。

 二つ目は、「工期と質」を同時に死守することだ。
 主に水玉さんに紹介してもらったので、顔をつぶすわけにいかないという理由だ。
 そこで「効果が不明の新しいことは思いついても絶対にやらない。
 性能が実証済みの既存の仕組みや部品で構成する」と決めた。
 まず執筆時間短縮のために話の枠組みをいわゆる「起承転結」にはめて、物語をシステムとして捉えることにした。
 たぶん僕はゲームのシナリオや小説、プロットまで含めれば、何十と物語を書いてきたが「起承転結」にはめてストーリーを作ったのは久しぶりだった。
 話の構成要素もキャラや世界観、ちょっとした趣向や仕掛けも含め、すべて性能がつまびらかな部品だけで構成した。
 そういう意味では今回の僕は作家ではなく編集者やアレンジャーだったかもしれない。
(さっき久しぶりと書いたが、たぶん天外2のシナリオ作業以来、二十年ぶりだ)
 どこかで見たような既存の部品だけで構成して面白いのか? といえば、読んでもらえればわかるが、さじ加減や組み合わせに注意を払って書けば、ちゃんと面白い。(続く)

http://bit.ly/JohnMary