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今週読んだ2冊
桝田 省治

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●ビッグボーナス ハセベバクシンオー著

 パチスロの攻略情報を売る詐欺組織の話だ。
 序盤は、パチスロ中毒者とそれをカモにする詐欺師の、どちらも「壊れてる」感じの温いんだか熱いんだかよくわからないやり取りが妙に新鮮。
 中盤から、ヤクザや企業など大きな組織の有無を言わせない介入が始まり、一気にハラハラドキドキ感が高まる。
 そこまではいい調子なのだが、終盤は「このピンチをどう切り抜ける!?」のオチが、派手な銃撃戦とカーアクション、終わってみれば「うるさいやつはみんな死にました」「AとBは実は前から知り合いでした」的なやや乱暴な風呂敷のたたみ方。
 悪いわけではないし、そのシーン自体は緊張感を保持していたとは思うが、序盤の「壊れてる」感の新鮮さに比べると凡庸な印象。
 とはいえ、中盤までの「リアルな非日常感」を楽しむだけでも十二分に楽しい。


●面影小町伝 米村圭伍著

 退屈姫君伝のサブキャラが主人公と聞いて、いつもの穏やかでコミカルなテイストだと思って読みはじめた。
 が、あにはからんや、サスペンス、あるいは因果がめぐる伝奇で、びっくり仰天。
 ひと振りの呪われた刀をめぐる設定周りは、いささか強引で、ある意味ツッコミどころ満載だが、それもここまで重ねれば様式美。
 ヒロインの数奇な運命に緊張の糸は途切れることなく、大満足の500ページ。
 さすが米村先生でございました。